[楽器情報] 禰寝碧海 製作のオリジナルモデル 2024年新作 ’Fuente de las Batallas’ の入荷です。ラベルに記されたこのモデル名はグラナダの街に散在する壮麗で優美な噴水の名前であり、前作の’Cuesta de Caidero’ とともに彼の出自たるこのスペイン屈指のギター製作の街と師アントニオ・マリンへの敬意を自らの作品をもって表わした1本です。そしてラベルとは別にボディ内部に直筆でHomenaje a Maestro Antonio Marin'と記された本作は、あくまで師のスクリプトを採用したという点においては禰寝碧海氏の原点回帰の一作ということができます。そして特筆すべきはここでも彼はオリジナルの「再現」などに努めるわけもなく、師の製作美学を実地に吸収し尽くしたその体感とともに異様なまでの解像度で洗練させた一本として提示していることで、まさに傑作と言える楽器となっています。
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 2.8 mm/6弦 3.8 mm
〔製作家情報〕
禰寝碧海(ネジメ マリン)1986年生まれ。アルベルト・ネジメ・オーノの名称でギター製作を行っている禰寝孝次郎氏の息子。父、孝次郎氏の影響下のもと幼少より音楽と工作に興味を持ち、2009年自由学園を卒業後本格的にギター製作の道を進むことを決意します。何度かの訪西の後、2012年9月には長期間グラナダに滞在し、父の師匠でもある名工アントニオ・マリン・モンテロに師事。スペインの伝統工法に立脚した製作法で、そこに瑞々しく個性的な音響的特性を盛り込んだ彼の楽器は、実に新鮮な感覚にあふれたものとなっており、1本として同じものがありません。また造作と塗装の精度の高さと美しい仕上がりも父と師匠とに劣らぬ素晴らしいもので、外観のこの上ない凛とした気品に結実しています。
海外でも高い評価を得ており、2017年にはグラナダの国際ギターフェスティバルの製作コンクールで入賞。現在は年に5~6本前後のペースで製作。左記のグラナダ製作コンクール入賞モデルの他、オリジナルモデル、そしてダニエル・フレドリッシュモデルなどがあり、それぞれが個性的な特徴を備え、ギターファンからの評価も益々の高まりを見せています。2020年にはフランスの出版社Camino Verde刊 Orfeo Magazine No.15で彼のインタビューと楽器が紹介されました。
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[楽器情報]
禰寝碧海 製作のオリジナルモデル 2024年新作 ’Fuente de las Batallas’ の入荷です。ラベルに記されたこのモデル名はグラナダの街に散在する壮麗で優美な噴水の名前であり、前作の’Cuesta de Caidero’ とともに彼の出自たるこのスペイン屈指のギター製作の街と師アントニオ・マリンへの敬意を自らの作品をもって表わした1本です。そしてラベルとは別にボディ内部に直筆でHomenaje a Maestro Antonio Marin'と記された本作は、あくまで師のスクリプトを採用したという点においては禰寝碧海氏の原点回帰の一作ということができます。そして特筆すべきはここでも彼はオリジナルの「再現」などに努めるわけもなく、師の製作美学を実地に吸収し尽くしたその体感とともに異様なまでの解像度で洗練させた一本として提示していることで、まさに傑作と言える楽器となっています。
内部構造はアントニオ・マリンのBouchet モデルにほぼ忠実に準拠した力木配置。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、ボディくびれ部より下側は計5本の扇状力木が、ちょうど駒板(より正確にいえばサドルと同じ)位置にほぼ横幅いっぱいに設置されたいわゆるトランスヴァースバーを貫通しボディボトム部まで伸びている全体構造。このトランスヴァースバーは低音側から高音側にかけてなだらかに高くなっており、それに応じて貫通する力木も高音側は太く高く、低音側は低く細い加工がされています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。ちなみに碧海氏は内部の造作の細部に至るまでが実に精緻で正確で美しい仕上がり。
触れる前から反応するかのように俊敏で、そして洗練された発音がまずは印象的ですが、機能性(バランス、サスティーンと終止、ダイナミクス、音像の均質性)においても秀逸なのはもちろんのこと、さらに特筆すべきはその表現の芸術性の高さにおいてでしょう。清冽でありながらどこか落ち着きとチャーミングささえ感じさせる声としての音、その表情の細やかさと魅力。瞬時のそして緩やかな変化、突然の現出と無音、といった身振りの俊敏さは曲の隅々にまで明確な表情を与え、しかもどんな細部にも音楽的ニュアンスをゆき渡らせるその細密な表現力が素晴らしい。スペイン的(グラナダ的)な明るさから出発して、音響の解像度を一気に増しながら音楽の普遍的な属性としての明朗さを備えるに至り、その高く抜けてゆくような響きの中にしっかりと重心感覚も持ち合わせた全体の音響設計は実に瑞々しく、清新で、そして古典的。まさしくグラナダへのオマージュであると同時に、純粋に音楽的で、極めて現代的な楽器として再創造し尽くした1本となっています。
さらに付言すれば、今回初出となる製作家オリジナルデザインのロゼッタと駒板のタイブロックを嵌め込んで、これが横裏板のココボロ材の印象的な赤みと相乗して外観に洒脱な雰囲気を纏わせておりなんとも魅力的な佇まいとなっています。演奏性の面ではDシェイプのちょうどよい厚みに設定されたネックはグリップ感がよく、弦の張りは中庸で、右手の発音の反応も速いので両手ともにストレスを感じません。全体はこの製作家ならではの美しいセラック塗装によって仕上げられ、音色のイメージを裏切ることなく清新な印象を外観にまとわせています。