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禰寝 碧海 Marin Nejime



New Arrival
〔商品情報〕
楽器名禰寝 碧海 Marin Nejime
カテゴリ国産クラシック 新作
品番/モデル’Iglesia de Santa Maria de la Alhambra’
弦 長650mm
日本 Japan
製作年2025年
表 板松 Solid Spruce
裏 板ココボロ Solid Cocobolo
程 度※10
定 価1,100,000 円
販売価格(税込)990,000 円
付属品

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
   :横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm/6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
禰寝碧海(ネジメ マリン)1986年生まれ。アルベルト・ネジメ・オーノの名称でギター製作を行っている禰寝孝次郎氏の息子。父、孝次郎氏の影響下のもと幼少より音楽と工作に興味を持ち、2009年自由学園を卒業後本格的にギター製作の道を進むことを決意します。何度かの訪西の後、2012年9月には長期間グラナダに滞在し、父の師匠でもある名工アントニオ・マリン・モンテロに師事。スペインの伝統工法に立脚した製作法で、そこに瑞々しく個性的な音響的特性を盛り込んだ彼の楽器は、実に新鮮な感覚にあふれたものとなっており、1本として同じものがありません。また造作と塗装の精度の高さと美しい仕上がりも父と師匠とに劣らぬ素晴らしいもので、外観のこの上ない凛とした気品に結実しています。

海外でも高い評価を得ており、2017年にはグラナダの国際ギターフェスティバルの製作コンクールで入賞。現在は年に5~6本前後のペースで製作。左記のグラナダ製作コンクール入賞モデルの他、オリジナルモデル、そしてダニエル・フレドリッシュモデルなどがあり、それぞれが個性的な特徴を備え、ギターファンからの評価も益々の高まりを見せています。2020年にはフランスの出版社Camino Verde刊 Orfeo Magazine No.15で彼のインタビューと楽器が紹介されました。
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オルフェオ取材同行記 栗山大輔、清水優一、禰寝碧海編はこちら


[楽器情報]
禰寝碧海 Nejime Marin 製作、オリジナルモデル ’Iglesia de Santa Maria de la Alhambra’2025年新作です。碧海氏は近年グラナダの街に因んだタイトルが付されたモデルを続けて発表しており、それはもちろん氏がアントニオ・マリンの工房で学んだ日々の極めてリアルな肌感覚や印象的風景に基づくもので、タイトルとその楽器との関係は絵画におけるそれさえも思わせるような、ある意味文学的なイマジネーションを喚起するものとなっています。さらにこれらのタイトルは決して楽器のイメージを安直に規定するような恣意的なものでは決してなく、それぞれの音響コンセプトとの連関もあるところはいかにも碧海氏らしい矜持の深さを感じさせます。

本作はあのアルハンブラ宮殿の中心に美しく建つ教会のイメージを纏った、氏の審美センスが十全に発揮された外観にまずは眼を惹かれてしまいます。バロック的な過剰さとは趣を異にするこの教会の壁に慎ましくも華やかにはめ込まれた色彩的な石のモザイクを、氏は本器のロゼッタにあしらってみせているのですが、その立体的で落ち着いた佇まいがなんとも素晴らしい。その他はヘッドプレートにも教会の尖塔部分を思わせる意匠がこれもさりげなく施されているのですが、その他は木材の質感を活かしきったシンプルな外観(まさに教会の佇まいを想起させるような)で一貫させています。そして深い艶を湛えたセラック塗装はいつもながらやはり見事なもので、世界屈指と言ってもよいのではないかと思うほどの完璧さで仕上げられており、特別な気品を楽器に付与しています。

表面板内部構造においても革新的とも言える力木配置が、極めて精密な細工によって行われています。基本となるのはスペイン伝統工法による設計で、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各一本のハーモニックバーを設置し、それぞれ高音側と低音側に開口部が設けられています。扇状力木は左右対称に7本が設置され、ボトム近くでこれらの下端を受け止めるように2本のV字型に配置されたクロージングバーという全体の設計になっていますが、本作ではこの7本の扇状力木の配置とそれぞれの形状の差異に注目すべき特徴があります。

7本の扇状力木をここで一番低音側を➀番として順番に一番高音側を⑦番とすると、②番と⑥番は上端がネック脚部分を起点として、2本のハーモニックバーにそれぞれ設けられた開口部をくぐり抜けちょうど駒板の両端をかすめるようにしてその下端を駒板下縁のところでストップさせています。その他の5本はホール下側ハーモニックバーを起点としてボトム部のクロージングバーでそれらの下端の終点としています。これら力木の形状は高さはほぼ2mmほどで統一しているのですが、幅は➀と④(センターに配置されたもの)は5mm、②は3mm、③と⑤は4mm、⑥と⑦は1cmとなっており断面形状は三角ですが②のみ山型になっています。上記サイズはおよその値ですが、実際には1本1本が精緻に設定されています。②と⑥の力木の起点と終点の位置とその他の力木との対照、➀~⑤と⑥⑦とのサイズ(幅)の極端ともいえる相違(それは先の②と⑥との、つまり高音側と低音側との対照としても考えるべきなのですが)、ハーモニックバーと②⑥の交差の関係など、シンプルですが大胆なコンビネーションが発想されていることがわかります。まずやはり②⑥とハーモニックバーとの関係性ですが、通常の(トーレス以降の)クラシックギターでは基本的に表面板ウエストより下部の駒板を中心とするエリアをいかに振動させるかが主眼となり、ウエストより上部は2本以上の強固なハーモニックバーの設置のほか厚めのプレートによる補強などでしっかりと強度を確保する(振動を抑制する)のですが、本器においては振動の基点である駒板とネックとを結び、2本のハーモニックバーはその振動伝達を(開口部を設けることによって)抑制することはありません。これは例えばトーレスやブーシェが下側ハーモニックバーのみに開口部を設け力木の(上記になぞらえて言えば➀②と⑤⑥の)上端をサウンドホール縁まで延伸していたことや、あるいはロマニリョスが同じようにハーモニックバーすべてに同様に開口部を設けて合計4本もの力木を横板の「肩」からホール下のバーまで設置していたことなどとも通底する試みであり、表面板下部と上部との振動領域の関係性をいかに処理し音響バランスへと結実させるかの、一つの明確な答えと言えます。

いわゆる「グラナダ的」な音響に拘泥することなく、ここで表出される音響は敢えて言えばサントス・エルナンデスの室内楽的な音響を再構成、再創造したかのような新鮮な魅力に溢れたものとなっています。サントスにおいて異なる特性を有していた各音が同時になることで独特の彫塑性を生み出していたものが、本器においては完璧なまとまりの中でしかし各音がそれぞれのアイデンティティを表出するような、すぐれてクラシカルな音響設計が達成されています。慎ましくも美しく艶を湛えた音像が撥弦の瞬間に現れてくる、その一つ一つの整った形、音楽的な密度が素晴らしい。発音もやや強めの反発感を伴った、とても心地よい感触で、音がタッチを「連れてゆく」ような自然なドライブ感が生まれます。瞬発と終止の明確さ、シャープさと粘り、軽くも重くもなり、持続と余韻も申し分なく、音楽的な身振りの細部にまで楽音としてのニュアンスが行き渡り、タッチとのリニアニティは非常に高いものがあります。また音色そのものの、どこか奥ゆかしさを内包したようなためらいがちな明るさ、その自然な佇まいがなんとも魅力的。創作における全き個性と高い完成度が両立した、誠に瞠目すべき一本となっています。

ネック形状は普通の厚みのDシェイプでややフラットなグリップ感、弦高値は2.8/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.5~2.0mmあります。レゾナンスはF#の少し上に設定されています。重量は1.62㎏。糸巻はスペインの高級ブランド フステーロの「トーレス」タイプを装着し、優美なアクセントを演出しています。ラベルは今回初出となるオリジナルのもので、開かれた扉のイメージがなんとも清々しい、ブランドの出自を明確に表明する優れたデザインとなっています。

※本作は2025年弦楽器フェアに出品されたものと同個体になります。製作家本人により必要な調整を施してあります。


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