〔製作家情報〕 ベルンド・マルティン(1954 ドイツ、シュツットガルト~2018 スペイン、グラナダ) 幼少よりピアノとギターの演奏に親しみ、ギタリストになるべく学習を積んでいましたが、名手デビッド・ラッセル若き日の演奏に接した彼は、そこで弾かれたトーレスの音色に魅了され製作家への道を決意、1976年22歳の時にスペイン、グラナダに向かいます。同地でエドゥアルド・フェレールの監修のもとアントニオ・デュラン・フェレールとホセ・ロペス・ベジードの工房で製作の基礎を学び、また当時自身の工房を起ち上げたばかりだった名工アントニオ・マリンの影響も受けながら、同地アルバイシン地区のサン・ニコラス広場から少し下ったプラサ・チャルカに小さな工房を開きます。「明確で深く、透明感を湛えた清潔な音。遠達性があり優美に歌ってくれる楽器が目標です」と語り、そしてなにより製作家と演奏家は互いに啓蒙し合うべきと強調した。そんな彼のギターはドイツ的な職人気質とスペインのおおらかで明朗な音楽性が絶妙に融合した、極めて完成度の高い楽器として結実し、1999年には“Concurso Nacional de Lutheria” (国際製作コンペティション)で1位を受賞しています(主催者はホセ・ルイス・ロマニリョス)。2006年には子息のルーカス・マルティン(1984~)とともに製作。その後も良質なギターを出荷し続けていましたが、2018年64歳の働き盛りで惜しくも逝去。グラナダで初めての「外国人」の製作家であり、その後同地がコスモポリタン的な様相を呈するきっかけとなった製作家でもありますが、彼のギターの魅力はやはりそのドイツ~グラナダ的融合の独特さにあると言えるでしょう。音響的にしっかりとした構築感がありながら、それこそアントニオ・マリン的なふっくらとした明朗な響きが加味された音響が個性的で、日本でも人気を博しました。2006年からは息子のLucas も加わり、同じ工房でそれぞれ独立したラベルで製作していましたが、ベルンドは64歳という働き盛りで惜しくも亡くなります。
〔楽器情報〕 ベルンド・マルティン 1996年製作 No.202 Used の入荷です。1999年に国際製作コンペティションで優勝する以前の、ある意味模索の時期ともいえる作品ですが、ここで彼は尊敬するアントニオ・トーレスをベースとして、魅力的な楽器を作りあげています。
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 4.0mm
〔製作家情報〕
ベルンド・マルティン(1954 ドイツ、シュツットガルト~2018 スペイン、グラナダ)
幼少よりピアノとギターの演奏に親しみ、ギタリストになるべく学習を積んでいましたが、名手デビッド・ラッセル若き日の演奏に接した彼は、そこで弾かれたトーレスの音色に魅了され製作家への道を決意、1976年22歳の時にスペイン、グラナダに向かいます。同地でエドゥアルド・フェレールの監修のもとアントニオ・デュラン・フェレールとホセ・ロペス・ベジードの工房で製作の基礎を学び、また当時自身の工房を起ち上げたばかりだった名工アントニオ・マリンの影響も受けながら、同地アルバイシン地区のサン・ニコラス広場から少し下ったプラサ・チャルカに小さな工房を開きます。「明確で深く、透明感を湛えた清潔な音。遠達性があり優美に歌ってくれる楽器が目標です」と語り、そしてなにより製作家と演奏家は互いに啓蒙し合うべきと強調した。そんな彼のギターはドイツ的な職人気質とスペインのおおらかで明朗な音楽性が絶妙に融合した、極めて完成度の高い楽器として結実し、1999年には“Concurso Nacional de Lutheria” (国際製作コンペティション)で1位を受賞しています(主催者はホセ・ルイス・ロマニリョス)。2006年には子息のルーカス・マルティン(1984~)とともに製作。その後も良質なギターを出荷し続けていましたが、2018年64歳の働き盛りで惜しくも逝去。グラナダで初めての「外国人」の製作家であり、その後同地がコスモポリタン的な様相を呈するきっかけとなった製作家でもありますが、彼のギターの魅力はやはりそのドイツ~グラナダ的融合の独特さにあると言えるでしょう。音響的にしっかりとした構築感がありながら、それこそアントニオ・マリン的なふっくらとした明朗な響きが加味された音響が個性的で、日本でも人気を博しました。2006年からは息子のLucas も加わり、同じ工房でそれぞれ独立したラベルで製作していましたが、ベルンドは64歳という働き盛りで惜しくも亡くなります。
〔楽器情報〕
ベルンド・マルティン 1996年製作 No.202 Used の入荷です。1999年に国際製作コンペティションで優勝する以前の、ある意味模索の時期ともいえる作品ですが、ここで彼は尊敬するアントニオ・トーレスをベースとして、魅力的な楽器を作りあげています。
内部構造はサウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバー、同じくサウンドホールの高音側と低音側にはそれぞれ一本の力木が横板のカーブに沿うようにして設置、ボディ下部は左右対称7本の扇状力木、そしてその先端をボトム部で受け止める2本のハの字型に設置されたクロージングバーといういかにもトーレスそのものといった構造で、これは彼の出自を明確に表していると言えるでしょう。レゾナンスはF#の少し下と低めの設定。
上記レゾナンス設定ゆえbassには奥行きがありまた全体にエア―感のある音像で、後年の彼のギターに比べると甘いロマンティックなニュアンスもありかなり魅力的。また発音も2000年以降の彼と比較すると素直な発音で、スペインの伝統的なギターにより近い感触です。スパニッシュギターの本質的な部分もさすがしっかりとつかんでおり、表現力はとても豊か。
しっかりと弾き込まれているため表面板全体(特にサウンドホール周り、ブリッジ下など)に傷はあります。裏板両肩に割れ補修履歴ありますがとても適切な処置が施されており、今後の使用に問題ございません。ネックは厳密に言えばほんのわずかに順反りですが演奏性には問題ないレベル。またフレット、糸巻(フステーロ製フレタタイプ)も問題ありません。
グラナダスクール最初の外国人製作家、中期の愛すべき一本です。