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ドミニク・フィールド Dominique P. Field
SOLD OUT
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 2.7mm/6弦 3.9mm
〔製作家情報]
Dominique P.Field ドミニク・フィールド(Paris 1954~ )
現代フランスを代表する製作家。ブーシェからダニエル・フレドリッシュへと続くフランスギター製作における重要な系統を受け継ぎながら、なおも独特の個性とその理論により新たな指針を提示し続けている名工です。最初ギタリストを志し学生時代は法律を学びながら演奏の修行をしていましたが(Emilio Pujolの弟子にあたるギタリストに教えを受けていたそうです)、同時にギターの構造と音、そして楽器本体への審美的な関心とが高まり、製作家をその芸術的役割において演奏家と同等と考えるようになります。彼は師匠からブーシェ、フレタなどの名器を紹介され、さらに自身もハウザーやアグアドなどのギターを弾く機会を得て、製作へのモチベーションをさらに高めてゆくようになると、1974年には最初のギターを製作し自らの方向性を確信するに至ります。
彼は基本的に独学でギター製作を学んでゆきますが、名工ロベール・ブーシェ(1898~1986)との直接の交流は現在に至るまでフィールドの製作美学に深い影響を与えることになります。ブーシェの工房に足繁く通っていた彼は1982年頃、代理で顧客からの修理依頼を受け付けることになり、10本以上に及ぶブーシェギターの修繕を行います。修理に際し彼はそれらのギターを仔細に検分し、その構造と音響、意匠と造作を研究し尽くします。そこでの成果をもとに、またブーシェ自身からのアドバイスも得て、彼はギター表面板と裏板におけるアシンメトリ(左右非対称)な構造による理想の音響への実践に取りかかります。いわば低音側と高音側とで力木の形状と配置を変え、また通常木目に直角の方向も配置される裏板のバーも傾斜を施したりなどの試みがなされてゆきますが、これは彼が敬愛するもう一人の名工イグナシオ・フレタ(1897~1977)からの影響も顕著に見て取れます。アシンメトリな配置構造自体は珍しいものではありませんが、フレタを基にしてそこにフィールド独自の方法論により設定された構造は極めて斬新かつ美しいものであり、異様な迫力と個性を放つに至っています。
更にはそうした音響の創造における実践だけではなく、ギター本体の意匠における極めて高度な達成も同じく特筆に値します。やはり個体毎にデザインを変えているロゼッタやパーフリングなどの繊細と精緻、優婉とさえいえる独特の佇まいは、決してそのデザイン性において華美さや新しさを打ち出したものではないものの、比肩するものがないと言えるほどの芸術的完成度を有しています。
現在もフランス、パリの工房で精力的に製作を続けており、フランスで最も長いウエイティングリストを抱える人気ブランドとなっています。彼のギターはスコット・テナントを始め、アダム・ホルツマン、ウラジミール・ミクルカ、エドゥアルド・イサークらの名だたる名手が使用しており、日本でもギターファン垂涎のアイテムの一つとなっています。
〔楽器情報〕
ドミニク・フィールド製作1992年製 No.85 Usedの入荷です。フィールド30代の作ですが、緻密で独特な音響設計、音色表現における洗練と深み、完璧な造作技術など、まさしく名品と呼ぶにふさわしい1本に仕上がっています。
ブーシェからの多大な影響を受けながらも、ここでは既に独自のアシンメトリな構造による音響の試みを見ることができます。表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)にも2本のハーモニックバーが設置されており、このうち一番ブリッジ寄りの1本は低音側から高音側に向かって若干斜めに下がってゆくように設置されています。扇状力木は5本、ボトム部にはそれらの先端を受け止めるように2本のクロージングバーがV字型に配置され、駒板の位置にはほぼ同じ面積で薄いパッチ補強がされているという全体の構造。レゾナンスはG#~Aに設定されています。近年では前衛とさえ言えるようなさらに個性的な力木構造を発案している彼の、それと比較するとオーソドックスな初期~中期のスタイルをここに見ることができます。
非常に高い音圧で、撥弦の瞬間から密度の高い洗練された音が現出し、十分なサスティーンから明確な(あいまいなところのない)終止までその充実さを保って鳴ります。全ての音密度が均質化されており、この点スペインの伝統的なギターのように低い重心でふくらみを持った低音と透明で高さのベクトルを有した高音との対比という音響設計とは異なり、低音から高音までが同じフェーズで、しかしそれぞれが明確なアイデンティティをもって鳴るのでまるで弦楽四重奏的な(オーケストラではなく)、互いの音が緊密に関係性を持った音響として現れます。和音においてはあのハウザーさえも凌駕するような完璧なひとつのまとまりとなり、対位法的な旋律においてはそれぞれの声部を鮮やかに描き分ける。凛とした艶を湛えた美しい音の表情にはどこか翳があり、それはやや安直に言えば「フランス的」としか言いようのない独特の翳と余韻なのですが、これがなんとも魅力的。いかにもクラシック音楽にふさわしい音の機微を表すのにこの上ない特質となっています。奏者は楽器の側から音楽を提案してくるような感覚を楽しむことができるのですが、しかるべきタッチの熟練と繊細さを求められるようなところがあり、この点は現代のなかばオートマティックな発音機能を備えたギターとは大きく異なるところでしょう。
オールセラック塗装による外観は気品と落ち着きがあり、この点でも彼の高い審美的感性が見て取れます。特にロゼッタやパーフリングなどの渋く、繊細さの極みともいえる細工は美しく、静かに全体を引き締めている、その佇まいが素晴らしい。工芸品としてのレベルもハイクラスな一本となっています。
再塗装はされておらずオリジナルのままの状態です。表面板ブリッジ下1弦と2弦位置に弦とび跡あり。その他細かな弾きキズやスクラッチあと、小さく浅い打痕などありますが経年数を考慮すると良好と言えるレベルです。裏板ボトム部分のセンターよりやや高音側に10センチほどの割れ修理歴がありますが適切な処置がされていますので今後の使用にも全く問題ありません。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットはわずかに摩耗していますが適正値を維持しています。ネック形状は普通の厚みで丸みのあるDシェイプ。弦高は2.7/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~2.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く調整することが可能です。糸巻はドイツ製のライシェルを装着、こちらも機能的に良好です。
Performance video
×
〔商品情報〕
楽器名
ドミニク・フィールド Dominique P. Field
カテゴリ
輸入クラシック 中古
品番/モデル
No.85
弦 長
650mm
国
フランス France
製作年
1992年
表 板
松単板 Spruce
裏 板
インディアン・ローズウッド単板 Indian Rosewood
程 度※
7
定 価
時価
販売価格(税込)
お問い合わせ下さい。
付属品
ハードケース(ヒスコック)
下の写真をクリックすると拡大して表示します
輸入クラシック 中古
クリストファー・ディーン Christopher Dean
ディーター・ミューラー Dieter Muller
ルカ・ワルドナー Luca Waldner
ホセ・マリン・プラスエロ Jose Marin Plazuero
ホセ・ゴンサレス・ロペス Jose Gonzalez Lopez
アントニオ・マリン・モンテロ Antonio Marin Montero
ドミニク・フィールド Dominique P. Field
●
ヘルムート・ブッフシュタイナー Helmut Buchsteiner
ヘスス・ベジード Jesus Bellido
ラファエル・マルドネス Rafael Mardones
ホアン・エルナンデス Juan Hernandez
パウリーノ・ベルナベ Paulino Bernabe
グレゴリー・バイヤーズ Gregory Stuart Byers
ルベン・モイセス・ロペス Ruben Moises Lopez
ホアキン・ガルシア Joaquin Garcia
ロビン・グリーン Robin Green
マヌエル・アダリッド Manuel Adalid
カルロス・ホアン・ブスキエール Carlos Juan Busquiel
エリック・サーリン Eric Sahlin
ホセ・ルイス・ロマニリョス 1世 J. L. Romanillos Ⅰ
ルカ・ワルドナー Luca Waldner
マヌエル・カセレス Manuel Caceres
※程度
10
新作
9
新品同様の美品
8
年代から見て状態が良い
7
年代から見て標準に近い状態
6
状態は少し劣るが演奏性は良い
5
状態は劣るが演奏上の問題は無い
4以下演奏性に問題がある楽器は、販売いたしません
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ライシェル
弦 高:1弦 2.7mm/6弦 3.9mm
〔製作家情報]
Dominique P.Field ドミニク・フィールド(Paris 1954~ )
現代フランスを代表する製作家。ブーシェからダニエル・フレドリッシュへと続くフランスギター製作における重要な系統を受け継ぎながら、なおも独特の個性とその理論により新たな指針を提示し続けている名工です。最初ギタリストを志し学生時代は法律を学びながら演奏の修行をしていましたが(Emilio Pujolの弟子にあたるギタリストに教えを受けていたそうです)、同時にギターの構造と音、そして楽器本体への審美的な関心とが高まり、製作家をその芸術的役割において演奏家と同等と考えるようになります。彼は師匠からブーシェ、フレタなどの名器を紹介され、さらに自身もハウザーやアグアドなどのギターを弾く機会を得て、製作へのモチベーションをさらに高めてゆくようになると、1974年には最初のギターを製作し自らの方向性を確信するに至ります。
彼は基本的に独学でギター製作を学んでゆきますが、名工ロベール・ブーシェ(1898~1986)との直接の交流は現在に至るまでフィールドの製作美学に深い影響を与えることになります。ブーシェの工房に足繁く通っていた彼は1982年頃、代理で顧客からの修理依頼を受け付けることになり、10本以上に及ぶブーシェギターの修繕を行います。修理に際し彼はそれらのギターを仔細に検分し、その構造と音響、意匠と造作を研究し尽くします。そこでの成果をもとに、またブーシェ自身からのアドバイスも得て、彼はギター表面板と裏板におけるアシンメトリ(左右非対称)な構造による理想の音響への実践に取りかかります。いわば低音側と高音側とで力木の形状と配置を変え、また通常木目に直角の方向も配置される裏板のバーも傾斜を施したりなどの試みがなされてゆきますが、これは彼が敬愛するもう一人の名工イグナシオ・フレタ(1897~1977)からの影響も顕著に見て取れます。アシンメトリな配置構造自体は珍しいものではありませんが、フレタを基にしてそこにフィールド独自の方法論により設定された構造は極めて斬新かつ美しいものであり、異様な迫力と個性を放つに至っています。
更にはそうした音響の創造における実践だけではなく、ギター本体の意匠における極めて高度な達成も同じく特筆に値します。やはり個体毎にデザインを変えているロゼッタやパーフリングなどの繊細と精緻、優婉とさえいえる独特の佇まいは、決してそのデザイン性において華美さや新しさを打ち出したものではないものの、比肩するものがないと言えるほどの芸術的完成度を有しています。
現在もフランス、パリの工房で精力的に製作を続けており、フランスで最も長いウエイティングリストを抱える人気ブランドとなっています。彼のギターはスコット・テナントを始め、アダム・ホルツマン、ウラジミール・ミクルカ、エドゥアルド・イサークらの名だたる名手が使用しており、日本でもギターファン垂涎のアイテムの一つとなっています。
〔楽器情報〕
ドミニク・フィールド製作1992年製 No.85 Usedの入荷です。フィールド30代の作ですが、緻密で独特な音響設計、音色表現における洗練と深み、完璧な造作技術など、まさしく名品と呼ぶにふさわしい1本に仕上がっています。
ブーシェからの多大な影響を受けながらも、ここでは既に独自のアシンメトリな構造による音響の試みを見ることができます。表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)にも2本のハーモニックバーが設置されており、このうち一番ブリッジ寄りの1本は低音側から高音側に向かって若干斜めに下がってゆくように設置されています。扇状力木は5本、ボトム部にはそれらの先端を受け止めるように2本のクロージングバーがV字型に配置され、駒板の位置にはほぼ同じ面積で薄いパッチ補強がされているという全体の構造。レゾナンスはG#~Aに設定されています。近年では前衛とさえ言えるようなさらに個性的な力木構造を発案している彼の、それと比較するとオーソドックスな初期~中期のスタイルをここに見ることができます。
非常に高い音圧で、撥弦の瞬間から密度の高い洗練された音が現出し、十分なサスティーンから明確な(あいまいなところのない)終止までその充実さを保って鳴ります。全ての音密度が均質化されており、この点スペインの伝統的なギターのように低い重心でふくらみを持った低音と透明で高さのベクトルを有した高音との対比という音響設計とは異なり、低音から高音までが同じフェーズで、しかしそれぞれが明確なアイデンティティをもって鳴るのでまるで弦楽四重奏的な(オーケストラではなく)、互いの音が緊密に関係性を持った音響として現れます。和音においてはあのハウザーさえも凌駕するような完璧なひとつのまとまりとなり、対位法的な旋律においてはそれぞれの声部を鮮やかに描き分ける。凛とした艶を湛えた美しい音の表情にはどこか翳があり、それはやや安直に言えば「フランス的」としか言いようのない独特の翳と余韻なのですが、これがなんとも魅力的。いかにもクラシック音楽にふさわしい音の機微を表すのにこの上ない特質となっています。奏者は楽器の側から音楽を提案してくるような感覚を楽しむことができるのですが、しかるべきタッチの熟練と繊細さを求められるようなところがあり、この点は現代のなかばオートマティックな発音機能を備えたギターとは大きく異なるところでしょう。
オールセラック塗装による外観は気品と落ち着きがあり、この点でも彼の高い審美的感性が見て取れます。特にロゼッタやパーフリングなどの渋く、繊細さの極みともいえる細工は美しく、静かに全体を引き締めている、その佇まいが素晴らしい。工芸品としてのレベルもハイクラスな一本となっています。
再塗装はされておらずオリジナルのままの状態です。表面板ブリッジ下1弦と2弦位置に弦とび跡あり。その他細かな弾きキズやスクラッチあと、小さく浅い打痕などありますが経年数を考慮すると良好と言えるレベルです。裏板ボトム部分のセンターよりやや高音側に10センチほどの割れ修理歴がありますが適切な処置がされていますので今後の使用にも全く問題ありません。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットはわずかに摩耗していますが適正値を維持しています。ネック形状は普通の厚みで丸みのあるDシェイプ。弦高は2.7/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~2.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く調整することが可能です。糸巻はドイツ製のライシェルを装着、こちらも機能的に良好です。