[製作家情報] 100年以上続く歴史ある工房にして世界的にも有名なスパニッシュギターブランドのひとつ ホセ・ラミレス Jose Ramirez。ホセ・ラミレス1世(1858~1923)の時代から現在のホセ・ラミレス5世まで、1世紀以上に渡りスパニッシュギター製作史のなかで最も重要なブランドの一つとしてその名を刻み続けており、いまなおワールドワイドにマーケットを展開する工房です。
〔楽器情報〕 ホセ・ラミレス3世のフラッグシップモデル「1A」のインディアンローズウッド仕様、1982年製 No.16745 Usedです。ボディ内部には「15」の数字がスタンプされており、これはラミレス公式の職人リストによるとホセ・ルイス・アルバレス・マリブランカ Jose Luis Alvarez Mariblanca が製作を担当したことになります。このモデルの特徴的な音響を不足なく備えており、全体に太めのマッシブな音で、特にやはり濃密な艶を湛えた高音はラミレスならではと言えるでしょう。
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ポリウレタン
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.7mm /6弦 3.5mm
[製作家情報]
100年以上続く歴史ある工房にして世界的にも有名なスパニッシュギターブランドのひとつ ホセ・ラミレス Jose Ramirez。ホセ・ラミレス1世(1858~1923)の時代から現在のホセ・ラミレス5世まで、1世紀以上に渡りスパニッシュギター製作史のなかで最も重要なブランドの一つとしてその名を刻み続けており、いまなおワールドワイドにマーケットを展開する工房です。
なかでもとりわけ評価が高く「Ramirez dynasty」 と言われるほどに豊饒の時代とされたホセ・ラミレス3世(1922~1995)の時期に製作されたギターは、革新的でありながら幅広いポピュラリティを獲得し、世界中のギタリストとギターファンとを魅了し続けました。1950年代末から1960年代、パウリーノ・ベルナベ、マリアーノ・テサーノスといった名職人が職工長として働き、高級手工品の品質を維持しながら大量生産を可能した独自の工房システムを確立します。そして1964年にこのブランドのフラッグシップモデルとして世に出した「1A」は、表面板にそれまでの松材に代わって杉材を使用、胴の厚みを大きくとり、横板は内側にシープレス材を貼り付けた二重構造、弦長は664mmで設定(通常は650mm)、さらに塗装には従来のセラック塗装からユリア樹脂のものに変更し耐久性を飛躍的に増すとともに、「ラミレストーン」と呼ばれる独特の甘く艶やかな音色を生み出し、真っ赤にカラーリングされた印象的な外観と相まってギター史上空前のポピュラリティを獲得することになります。
これらラミレス3世がクラシックギターに対して行った改革はマーケット戦略の面でも、また製作の面でも実に独創的でしかも時代の要請に十全に応じたもので、のちのギター製作全般に大きすぎるほどの影響を及ぼしたのと同時に、まさにクラシックギターのイメージを決定するほどに一世を風靡しました。
ラミレス3世の息子4世(1953~2000)は18歳の時に父ラミレス3世の工房にて徒弟として働くようになり、1977年には正式に職人として認められます。1988年には妹のアマリアと共にブランドの経営を任されるようになり、父の製作哲学を引き継ぎながら、より時代のニーズに則した販売戦略(エステューディオモデルの製作、標準的な650mmスケールの採用等々)を展開しさらにシェアを拡大してゆきますが、3世亡き後わずか5年後の2000年にこの世を去ります。
その後もアマリアを中心に柔軟な商品開発を継続しますが、2000年代以降はむしろ名手アンドレス・セゴビアの名演と共にその音色が記憶に残る3世と4世の時代につくられたモデルに人気が集中するようになり、特に製作を担当した職人のイニシャルが刻印されていた1960年代のものは往年のファンに現在も愛奏されています。
〔楽器情報〕
ホセ・ラミレス3世のフラッグシップモデル「1A」のインディアンローズウッド仕様、1982年製 No.16745 Usedです。ボディ内部には「15」の数字がスタンプされており、これはラミレス公式の職人リストによるとホセ・ルイス・アルバレス・マリブランカ Jose Luis Alvarez Mariblanca が製作を担当したことになります。このモデルの特徴的な音響を不足なく備えており、全体に太めのマッシブな音で、特にやはり濃密な艶を湛えた高音はラミレスならではと言えるでしょう。
表面板内部構造は1A モデルの基本形を踏襲しており、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、このうち下側バーの中央で(つまりサウンドホールのちょうど真下のところで)、低音側上部から高音側下部に向かって下がってゆくように斜めに設置されたもう一本のバーが交差しており、そしてボディ下部は6本の扇状力木がセンターの1本を境にして高音側に2本、低音側に3本を配し、ボトム部分でそれらの先端を受け止めるように2本のクロージングバーがハの字型に配置されています。ブリッジ位置には駒板よりも長いパッチ板が貼られています。レゾナンスはG#~Aの間に設定されています。
割れの修理履歴はなく木材に関しての大きなダメージはありませんが、全体はウレタン再塗装が施されており、その際に深い打痕等は修正された形跡があります。現時点で弾き傷や打痕等も少々見られ、横裏板は衣服等による細かな摩擦あとがありますがきれいな状態を維持していると言えます。指板は二重指板とフレット打ち換え歴があり、現時点でネック状態は良好で、フレットは1~5フレットでやや摩耗ありますが演奏性には問題のないレベルです。指板調整により弦高値もこの時期のラミレスとしては低く弾きやすく設定されており、2.7/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)となっています。サドル余剰はありません。ネックシェイプはDシェイプの薄めで角の取れた形状ですのでこのブランドとしてはコンパクトなグリップ感。大きめなサイズ感と高低差のある設定などでやや手ごわい印象のあるラミレスですが、本作は総じて左手の演奏性のストレスが軽減されています。