エステソの教えを受けた甥のファウスティーノ・コンデ(1913~1988)がその弟達マリアーノ1世(1916~1989 )とフリオ(1918~1995)とともにエステソの工房スタッフに加わり、エステソ亡きあとも「Viuda y Sobrinos de Domingo Esteso」(エステソ未亡人とその甥達による)というラベルでこのブランドを継続してゆきます。1959年にエステソの妻(※Nicolasa Salamanca エステソギターの塗装を担当していた)が亡くなるとラベルを「Sobrinos de Domingo Esteso/Conde Hermanos」に変更し、この時からコンデ・エルマノスの名前がブランド名として使われ始めます。「エルマノス」は兄弟の意で、この3人による共同の工房であることを示しています。
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
:横裏板 セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.1mm / 6弦 2.3mm
〔製作家情報〕
フェリーペ・コンデ・クレスポ Felipe Conde Crespo 1991年スペイン、マドリッド生まれ。フラメンコギターブランドとして有名なコンデ・エルマノスの第4世代を担う製作家として、2022年からマドリッド市内にあるフォメント通りの工房で製作しています。
彼の父親フェリーペ1世 Felipe Conde Cavia は現在の「Felipe Conde」ブランドの創始者、叔父 マリアーノ2世 Mariano Conde Cavia も現在の「Mariano Conde」ブランドの創始者であり、この二人は兄弟でもともとConde Hermanos ブランドとしてフェリーペ工房(この「フェリーペ」はマドリッドの通りの名前)でともに働いていました。
数多いスペインのフラメンコギターブランドの中でも、屈指の定番とされるコンデ・エルマノス。ブランドの始まりはマヌエル・ラミレスの伝説的な工房で名工サントス・エルナンデスと共に職人として働いていたドミンゴ・エステソ(1882~1937)が、1919年に同じマドリッドのグラヴィーナ7番地に自身の工房を開くところまで遡ります。
エステソの教えを受けた甥のファウスティーノ・コンデ(1913~1988)がその弟達マリアーノ1世(1916~1989 )とフリオ(1918~1995)とともにエステソの工房スタッフに加わり、エステソ亡きあとも「Viuda y Sobrinos de Domingo Esteso」(エステソ未亡人とその甥達による)というラベルでこのブランドを継続してゆきます。1959年にエステソの妻(※Nicolasa Salamanca エステソギターの塗装を担当していた)が亡くなるとラベルを「Sobrinos de Domingo Esteso/Conde Hermanos」に変更し、この時からコンデ・エルマノスの名前がブランド名として使われ始めます。「エルマノス」は兄弟の意で、この3人による共同の工房であることを示しています。
1960年代に入るとそれまでエステソを踏襲していたモデルを全てデザインから内部構造に至るまでオリジナルのものに一新。半月型にカットした有名な「Media Luna」ヘッドシェイプもこのころからハイエンドモデルの符牒として採用され、この時期世界的に高まる需要とともに、名手パコ・デ・ルシアらの人気ギタリストがコンデギターをメインに使用するようになると飛躍的にシェアを広げてゆき、ブランドとしての不動の地位を確立します。
1980年にはマリアーノ1世がフェリーぺ5番地に工房を立ち上げ、彼の息子たち(※この二人の兄弟がフェリーぺ1世とマリアーノ2世。1970年代初頭からグラヴィーナ工房で修行を始めています)とともに製作。グラヴィーナ工房と連携して製作していましたが、1988年にファウスティーノが亡くなったのを機にフェリーぺ工房は独自の操業を開始します。しかし翌年の1989年に後を追うようにマリアーノ1世もこの世を去り、2人の息子たちがフェリーぺ工房を継承。ここからフェリーぺ工房は3つのコンデ工房の中でも特に時代のニーズに柔軟な対応を見せ、安定した商業ベースを維持するようになります。
そして2010年にフェリーぺ1世は「フェリーペ・コンデ Felipe Conde」、マリアーノ2世は「マリアーノ・コンデ Mariano Conde」 としてそれぞれの独立したブランドとして工房を立ち上げ、それまでのコンデ・エルマノスの伝統を継承しながらもそれぞれの個性を濃密に注ぎ込んだ良品を現在も製作しています。
フェリーペ・コンデ・クレスポ はこのスペイン屈指の名門ブランドの第4世代を担う職人として、父フェリーペ1世に2007年に弟子入りし、2012年には職人そして製作家としての自身のアイデンティティを確立し独自のスタイルでギターづくりを始めていたといいます。ここからさらに10年後の2022年には満を持して自身の工房を設立、完全オリジナルブランドとしてフラメンコとクラシックの両ジャンルをハイスペックなモデルのみに限定し、すべて自身一人で作り上げる方式で運営しています。自らの出自への深い理解と探求をベースに、さすが21世紀の製作家らしく歴史に対する柔軟な俯瞰力とエッセンスの抽出力を備えており、これが彼のギターに伝統の濃密さと同時にフレッシュな身振りを与えていることが特筆されます。コンデブランドとして先人達の成果だけに拘泥することなく、また殊更にモダンな潮流に与することもない、現在の地点で求めるべきものを見極めており、その醒めたアプローチは(これだけの名門を一人で担ってゆくことの気負いを一切感じさせない点でも)驚嘆すべきものがあり、文字通り今後が期待される俊秀の一人と言えるでしょう。
[楽器情報]
フェリーペ・コンデ・クレスポ製作、表面板は松、横裏板は良質なマダガスカル・ローズウッド仕様のフラメンコ・ネグラ 664mmスケール、2025年製 No.91 Usedです。自らの出自たるコンデ・エルマノスというバックグラウンドについて熟知し尽くしているはずであろうこの若き製作家が、自身のオリジナルブランドとしてのモデルを開発してゆく過程で改めて仔細に参照したのが彼の祖父たちが1970年代に製作したギターだったそう。しかしながら先人たちの成果の単純で狭小な反復には陥らずに、スペインという伝統性をまるごと包摂しながら柔軟に自身がいま着地すべき点を見極め、何ら気負いのない自然さでそこに現代の衣装を纏わせたような楽器を創出しています。ここにはドミンゴ・エステソのロマンティックな気品や、コンデ・エルマノスのあの挑みかかってくるような強い打ち出しとも異なる、落ち着いた佇まいの中にスピード感を内包した現代的な身振りがあり、しかもあくまでもフラメンコ的なニュアンスを逸脱しないところはさすが。
表面板の力木配置はむしろオーソドックスと言えるものになっています。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバーを設置し、ホール周りはロゼッタと同じ範囲を覆うように円形の補強板が貼られています。補強板はネック脚と上側ハーモニックバーとの間にも長辺が15cm、厚さ2mmほどの角丸長方形のものが貼られています。表面板下部は左右対称7本の扇状力木とこれらの下端をボトム近くで受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバーという全体の配置。7本の扇状力木は中央に配された3本が互いに平行に、サウンドホールの直径の幅に収まるようにして設置されており、残りの計4本は少し離れて扇状に拡がるように角度をつけて配置されています。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。
木そのものの持つ粘りが適切に活かされ、各音は自然な分離を保ち、うねりながらどんどんとドライブしてゆく発音感覚が実に心地よく、そこにネグラならではの重厚さや奥行きが加わった全体の音響はフラメンコとしての十全な機能とバランスを有しており、さすがに名門ブランドの4代目としての確かな腕を感じさせます。きりっとした高音と低音の渋く力強いうねりとの対比とバランス、鋭くダイナミックな身振り、全体に抑えた繊細な表情などいずれも秀逸で、しかもスパニッシュなニュアンスも全く不足ありません。
2025年作だけに極めて良好な状態の1本です。全体はセラック塗装仕上げ。表面板指板脇やゴルペ板の縁部分などの数点の浅い弾きキズ、また裏板のセンター部分には長さ2㎝ほどのスクラッチが2本見られ、またネック裏も少々の爪キズあるものの、その他はとても綺麗な状態で出荷時のみずみずしさがまだ感じられます。もちろんネックやフレットなどの演奏性に関わる部分も問題ありません。弦高値は出荷時のままで2.1/2.3mm(1弦/6弦 12フレット)と充分に低い設定となっており、タッチの強さによってはビリつくところもありますが、現状を保持してのお渡しとなります。サドル余剰は1.5mmとなっています。糸巻はスペインの老舗ブランドFustero 製を装着しています。ボディ全体の重量は1.54kg。