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マヌエル・ベジード Manuel Bellido
〔商品情報〕
楽器名 | マヌエル・ベジード Manuel Bellido |
カテゴリ | 輸入フラメンコ 中古 |
品番/モデル | エスペシャル |
弦 長 | 650mm |
国 | スペイン Spain |
製作年 | 1992年 |
表 板 | 松 Solid Spruce |
裏 板 | シープレス Solid Cypress |
程 度※ | 7 |
定 価 | 時価 |
販売価格(税込) | お問い合わせ下さい。 |
付属品 | ハードケース |
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指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:木ペグ
弦 高:1弦 2.5mm/6弦 3.2mm
[製作家情報]
マヌエル・ベジード Manuel Lopez Bellido 1939年 グラナダ生まれ。13歳の時に同地の家具工房Claudio Carmona 工房に徒弟として入り(その時すでに工房ですぐれた職人として働いていた友人のアントニオ・マリン・モンテロが彼に木工技術を教えています)、急速にその腕前を上げていきます。ある日友人から依頼されたバンドゥーリアの修理を手がけたことで楽器の構造に興味を持ち、やがて自らの生業とすることを決意、アントニオよりも先にCarmonaの工房を辞し、グラナダのメンター的存在として今では名高いエドゥアルド・フェレールの工房に16歳の時に入ります。しかし最初はカスタネットを主に製作、生活のため家具職人に戻ることも考えるなど迷った時期もあったようですが、彼の木工技術の才能を見抜いたエドゥアルドがバンドゥーリアとギター製作をフルタイムで行う職人として再雇用し、ここで遂にマヌエルは本格的な楽器製作に従事することになります(このあとアントニオ・マリンもまたエドゥアルドの工房に入り、再び2人は同僚となります)。そして1960年、兵役を終えた21歳の時にマヌエルは独立を決意し、盟友アントニオとともに共同ブランドMontero y Bellido を起ち上げます。
最初は自分達のラベルではなく師フェレールの工房品として、またはマヌエル・デ・ラ・チーカのラベルで出荷するなどして生計を繋ぎ、何度か工房の移転を余儀なくされるなどの困難もありながら、次第に顧客を獲得してゆきます(R.S.デ・ラ・マーサ や パコ・デ・ルシアなどの名手たちからのアクセスも入るようになります)1970年代に入ると日本をはじめ国外からの注文でますます需要も高まり、工房にはマヌエルの弟ホセ・ロペス・ベジード(1943~)、アントニオの甥のパコ・サンチャゴ・マリン(1946~)、そしてラファエル・モレーノ(1954~)らが徒弟として加わり生産体制を強化してゆきます。しかし1973年にパコ・マリンが独立し、その翌年アントニオのもう一人の甥ホセ・マリン・プラスエロ(1960~)が工房に加わりますが、ここでマヌエルとアントニオの共同作業は終わりを迎え、それぞれ独立して製作を行うことになります(ホセ・マリンはこの後アントニオの工房で製作を始めることになります)。
マヌエルのギターは師エドゥアルドから受け継いだグラナダの伝統的な作風を基礎としながら、かなり大胆に構造的な試みを現在に至るまで行っています。しばしばそれはモダンギター的な趣さえも呈するものであるのにも関わらず、音色における彼の個性はどのモデルにも通底していることはある種驚愕に値すると言えるでしょう。反応のヴィヴィッドな木質感たっぷりの響きはいかにもグラナダ的ですが、音の表情にはどこかストイックなところがあり、これがなんとも渋い味わい。フラメンコモデルを主に製作しており、このジャンルの音楽的要望にしっかりとレスポンスし、かつ汎ジャンルなニュアンスを多く含んだ音はやはり独特の魅力を備え、コアなファンの評価も高いブランドとなっています。
現在はPaseo de Las Palmas,5 の細長い工房で彼の息子たち(ヘススとマウリシオ、ただしそれぞれ独立したブランドとして)とともに製作を行っています。
[楽器情報]
マヌエル・ベジード製作 1992年製Used 木ペグ仕様のフラメンコブランカ、 Especial モデルが入荷致しました。本作はフラメンコの名手チクエロ Chicuelo が使用したもので、さすがにしっかりと弾き込まれており、十分に鍛え、熟成されたような魅力的な1本となっています。
マヌエルらしい、どの音も硬質できりっとした音像で、抒情に偏り過ぎずとも表情の変化は不足なく、常に上品な佇まい。そして発音と終止におけるその身振りの鋭敏さやうねりの感覚、弱音から強音への瞬間的な反応、ラスゲヤードのマッシブな音塊の感触はいかにもフラメンコ的な身振りに相応しく、このジャンルのギターとして十全の機能を有しています。
表面板内部構造はサウンドホール上側に2本、下側にも2本のハーモニックバーを設置し、このうち一番ブリッジ側の1本は低音側から高音側にかけてやや斜めに下がってゆくように設置されており、しかもこの4本ともそれぞれが高さも形状も微妙に異なる加工がされています。サウンドホールを囲むように補強プレートが貼られ、その外側には横板に添うようにして高低音側それそれに短い(ホール上下に配されたバーの間の長さだけ)1本ずつの力木が設置されています。そして扇状力木は左右対称に9本が設置されており、このうちセンターを含む低音側5本のみその先端をボトム部で受け止めるようにクロージングバーを設置(通常では高音側と低音側それぞれに一本ずつ、V字型になるように配置される)、ブリッジの位置には駒板よりも幅の狭いプレートが横幅いっぱいにわたって設置されているという全体の構造。レゾナンスはGの少し上に設定されています。
サウンドホール下に水平のバーと斜めに傾斜したバーの2本を配し9本の扇状力木という構造はフラメンコでは極めて珍しいと同時に、あのイグナシオ・フレタのギターを想起させる配置であることはとても興味深い。様々な実験と実践を現在に至るまで重ねてきたこのブランドにとって、当然これはこの時期だけの仕様とも言えますが、実験的でありながら音響的に十全な着地がなされているところは製作家の力量の所以でしょう。
塗装はオリジナルのセラックニスで、ボディ全体にスクラッチ傷、打痕、塗装のムラと摩擦による摩耗が見られます。裏板の高音側ボトム部分に割れ補修歴があります。ネックは真っ直ぐを維持しており、フレットはやや摩耗ありますが演奏性には問題のないレベルです。木ペグは特徴的なサップの入った黒と黄色の印象的な見た目で、現状で機能的な問題はありません。ゴルペ板はヘッドプレートの形状を模した洒落たカッティング。弦高は12フレットで3.2mm/2.5mmですが、ネックの差し込み角度によりフラットな感触があるため実際の数値よりも低く感じます。ネックシェイプは薄くフラットなDシェイプに加工されています。
グラナダを代表するブランドの、珍しく、また魅力的な佳品、おすすめの一本です。