ネック:セドロ指 板:エボニー塗 装:ポリウレタン糸 巻:フステーロ弦 高:1弦 2.1mm /6弦 2.8mm[製作家情報]Moreno y Castro モレーノ・イ・カストロ アルトゥーロ・サンサーノ・モレーノ Arturo Sanzano Moreno とマリアーノ・テサーノス・カストロ Mariano Tezanos Castro(1949~)の2人の共同製作によるブランド。もともと二人ともホセ・ラミレス3世の工房で修行しのちにラミレス公認の熟練職人としてそれぞれ「AS」と「MTC」のイニシャルを与えられています。マリアーノの父は同工房の伝説的職人マリアーノ・テサーノス・マルティン(1915~1982)で 、同工房で「MT」のイニシャルが刻印された彼のギターはハウザー1世を「諦めた」アンドレス・セゴビアのそれに代わるメインギターとなり、またナルシソ・イエペスの(ベルナベを使用するより前の)最初の10弦ギターを製作しており、まさしく当時のメインストリームの中心を形成したともいえる重要な職人です。息子のテサーノス・カストロは父の影響もあってか早くからギター製作に興味を持ち、1963~1984年の期間ラミレス3世の工房で働いたのち、1984年にサンサーノ・モレーノとMoreno y Castro ブランドを起ち上げます。この共同作業はわずか3年で解体しますが、テサーノスのほうはその後単独の期間を経て1992年にやはりラミレス工房出身のテオドロ・ペレスとM.Tezanos Perez として共同製作を開始。これは10年以上続き充実した製作ペースを維持しながら良質なギターをコンスタントに出荷してゆき、当時すでにラミレス工房出身者による群雄割拠状態であったマドリッドの中でも際立った人気を確立してゆきます。2000年代後半に再び単独での製作に戻りますが2010年頃には病気のため製作から退いています。[楽器情報]モレーノ・イ・カストロのフラメンコモデル、パラ・カサ・アルカンヘル ラベルの1985年製 Usedが入荷致しました。Para Casa Arcangel Fernandez は同じスペイン、マドリッドの名工アルカンヘル・フェルナンデスの工房品であることの意。表面板は松、横裏板はインディアンローズウッドのいわゆるネグラ(黒)モデルで、ラミレス工房の手練れの職人であった二人による申し分のないフラメンコギターに仕上がっています。表面板内部構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、左右対称5本の扇状力木とこれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置には駒板よりもやや長い薄い補強プレートが貼られているという全体の設計で、レゾナンスはフラメンコとしてはやや高めの(ラミレスでは普通の)G#~Aの間に設定されています。アルカンヘル工房品は実際の作り手の裁量にゆだねられる部分が大きいのか、アルカンヘルの名を冠してはいますが製作家本人のオリジナル色が強く、本作においてもアルカンヘルの設計よりも二人のよく知るラミレスのフラメンコ設計に近いものとなっています。音はラミレス系マドリッド派の最良の着地ともいうべきもので、響箱の容量を十分に活かした悠揚たる響きながらも一つ一つの音はエコーを抑えはっきりしており、音像は程よい丸みと艶を湛え、フラメンコとしての反応性も適切で弾いていると自然にドライブしてゆく感覚が心地よい。特筆すべきはその表情の高いリニアニティで、タッチの変化に十全に対応し、音楽的に反応します。ラスゲアードなどフラメンコのパーカッシブなニュアンスの表出と機能性にも全く不足はありません。弦長は648㎜とこのジャンルとしてはやや短めですが迫力も十分です。割れなどの大きな修理履歴はありません。表面板の指板両脇、ゴルペ板縁部分やサウンドホール周りなどには弾きキズはやや集中して見られますが経過年数を考慮すると少なめと言えるレベル。横裏板は演奏時に胸が当たる部分などに摩擦やスクラッチ痕などが見られます。ネックは良好な状態で、フレットも1~5フレットでやや摩耗ありますが適正値の範囲内。ネック形状はDシェイプのフラットで薄めになっておりコンパクトなグリップ感。弦高値は2.2/2.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0mmとなっています。ヘッドシェイプはのちテサーノスヘッドの萌芽ともいうべきデザインで(ただし洗練さにおいてやはりこの時点ではかなり劣ってはいるのですが)、ここでもオリジナル性が保持されています。
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ポリウレタン
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.1mm /6弦 2.8mm
[製作家情報]
Moreno y Castro モレーノ・イ・カストロ
アルトゥーロ・サンサーノ・モレーノ Arturo Sanzano Moreno とマリアーノ・テサーノス・カストロ Mariano Tezanos Castro(1949~)の2人の共同製作によるブランド。もともと二人ともホセ・ラミレス3世の工房で修行しのちにラミレス公認の熟練職人としてそれぞれ「AS」と「MTC」のイニシャルを与えられています。マリアーノの父は同工房の伝説的職人マリアーノ・テサーノス・マルティン(1915~1982)で 、同工房で「MT」のイニシャルが刻印された彼のギターはハウザー1世を「諦めた」アンドレス・セゴビアのそれに代わるメインギターとなり、またナルシソ・イエペスの(ベルナベを使用するより前の)最初の10弦ギターを製作しており、まさしく当時のメインストリームの中心を形成したともいえる重要な職人です。息子のテサーノス・カストロは父の影響もあってか早くからギター製作に興味を持ち、1963~1984年の期間ラミレス3世の工房で働いたのち、1984年にサンサーノ・モレーノとMoreno y Castro ブランドを起ち上げます。この共同作業はわずか3年で解体しますが、テサーノスのほうはその後単独の期間を経て1992年にやはりラミレス工房出身のテオドロ・ペレスとM.Tezanos Perez として共同製作を開始。これは10年以上続き充実した製作ペースを維持しながら良質なギターをコンスタントに出荷してゆき、当時すでにラミレス工房出身者による群雄割拠状態であったマドリッドの中でも際立った人気を確立してゆきます。2000年代後半に再び単独での製作に戻りますが2010年頃には病気のため製作から退いています。
[楽器情報]
モレーノ・イ・カストロのフラメンコモデル、パラ・カサ・アルカンヘル ラベルの1985年製 Usedが入荷致しました。Para Casa Arcangel Fernandez は同じスペイン、マドリッドの名工アルカンヘル・フェルナンデスの工房品であることの意。表面板は松、横裏板はインディアンローズウッドのいわゆるネグラ(黒)モデルで、ラミレス工房の手練れの職人であった二人による申し分のないフラメンコギターに仕上がっています。
表面板内部構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、左右対称5本の扇状力木とこれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置には駒板よりもやや長い薄い補強プレートが貼られているという全体の設計で、レゾナンスはフラメンコとしてはやや高めの(ラミレスでは普通の)G#~Aの間に設定されています。アルカンヘル工房品は実際の作り手の裁量にゆだねられる部分が大きいのか、アルカンヘルの名を冠してはいますが製作家本人のオリジナル色が強く、本作においてもアルカンヘルの設計よりも二人のよく知るラミレスのフラメンコ設計に近いものとなっています。
音はラミレス系マドリッド派の最良の着地ともいうべきもので、響箱の容量を十分に活かした悠揚たる響きながらも一つ一つの音はエコーを抑えはっきりしており、音像は程よい丸みと艶を湛え、フラメンコとしての反応性も適切で弾いていると自然にドライブしてゆく感覚が心地よい。特筆すべきはその表情の高いリニアニティで、タッチの変化に十全に対応し、音楽的に反応します。ラスゲアードなどフラメンコのパーカッシブなニュアンスの表出と機能性にも全く不足はありません。弦長は648㎜とこのジャンルとしてはやや短めですが迫力も十分です。
割れなどの大きな修理履歴はありません。表面板の指板両脇、ゴルペ板縁部分やサウンドホール周りなどには弾きキズはやや集中して見られますが経過年数を考慮すると少なめと言えるレベル。横裏板は演奏時に胸が当たる部分などに摩擦やスクラッチ痕などが見られます。ネックは良好な状態で、フレットも1~5フレットでやや摩耗ありますが適正値の範囲内。ネック形状はDシェイプのフラットで薄めになっておりコンパクトなグリップ感。弦高値は2.2/2.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0mmとなっています。ヘッドシェイプはのちテサーノスヘッドの萌芽ともいうべきデザインで(ただし洗練さにおいてやはりこの時点ではかなり劣ってはいるのですが)、ここでもオリジナル性が保持されています。