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カレル・デダイン Karel Dedain



New Arrival
〔商品情報〕
楽器名カレル・デダイン Karel Dedain
カテゴリ輸入クラシック 新作
品番/モデルEnrique Garcia inspired model
弦 長640mm
ベルギー Belgium
製作年2025年
表 板松 Solid Spruce
裏 板中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
程 度※10
定 価2,200,000 円
販売価格(税込)2,090,000 円
付属品ハードケース(ヒスコック 黒)

ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
   :横裏板/セラック
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 3.0mm
   :6弦 4.0mm

[製作家情報]
Karel Dedain カレル・デダイン 1976年生まれ。ベルギー、ヘント(Gent)に工房を構える製作家で、同国のワルタル・ヴェレートと並んで近年国際的に評価の高まりを見せる俊秀です。

グラフィックアートを専攻する学生だった20歳の時にフラメンコギターと出会い、演奏するようになりますが、ここで木工を得意としていた彼は自分のためにギターを作ろうと思い立ち、同国の製作学校 CMB(Centrum voor Muziekinstrumentenbouw)でワルタル・ヴェレートに師事します(ちなみに自分のためのギターを作るということが製作への契機となった名工の例は特に西欧には数多く、自身のその後の製作態度に少なからず影響を与えているであろうことを考えると興味深いプロセスであると言えます)。カレル氏曰く「ベルギーにはギター製作の伝統がなく、それが逆に製作を志す者に選択の自由を与えてくれました。つまり自らのヴィジョンを実現するのに国や流派に関係なく、それらを横断しながら自らのスタイルに合うものを研究したのです。そしてまたマテリアルの面でも、様々な国へと製作に必要な木材や治具を探しに行かなければなりませんでした。」このように自らのスタイルを貪欲に追及する中でラティス構造やダブルトップなどのモダンギターも製作した彼は、やがてその着地点をトーレス、アリアス、ガルシア、シンプリシオ、そしてマヌエル・ラミレス工房などのスペインの名工たちによるギターに定めてゆきます。現在はそれらの精緻なレプリカモデル及び ‛Inspired’(つまり自らの創意を加えて再構築した)モデル、そして自身のオリジナルモデルを製作しています。その繊細極まりない造作とオリジナルのエッセンスを忠実に再現する稀有な完成と技術、極めて高い演奏性、完璧な音響性などは師のヴェレートにも比肩しうるクオリティを有し、高い評価を獲得してゆきます。

近年ではフランスのアート系出版社Camino Verde が刊行するウェブマガジン「Orfeo Magazine」で特集が組まれたほか(同特集では師のヴェレートらベルギーの製作家がフィーチャーされました)、同出版社が発行する製作家シリーズ(サントス・エルナンデス、ルネ・ラコート、ビセンテ・アリアス、そして最新刊ロベール・ブーシェ)での実寸図作成を担当し執筆陣にも名を連ねるなどし日本でも注目を集めています。因みに彼が作成した実寸図は実作を視野にした極めて精緻なもので、これらの書籍の資料的価値をより高める重要なコンテンツのひとつとなっています。

[楽器情報]
カレル・デダイン製作のエンリケ・ガルシアモデル、2025年新作です。
彼が自身のオリジナルモデルのほか、名工へのオマージュモデル、さらにはその深い知見に裏打ちされた瞠目すべきインスパイアドモデルを展開していますが、これは文字通り彼の敬愛する伝統的なスタイルで製作された名品から彼がinspiredされ、それを再解釈、再構築したモデルとなります。本作はそのInspired model として製作された一本。

エンリケ・ガルシア(Enrique Garcia 1868~1922)という、マヌエル・ラミレスに学び(これついてはホセ・ラミレス1世という説もあります)、バルセロナの地でフランス的な製作文化とトーレスの伝統とを融合させ全く独自のギターを作り上げてバルセロナ派の中心人物となり、さらにはその影響を彼の死後もあのイグナシオ・フレタ1世や南米ギターの音響キャラクターの形成にまで寄与したであろう、このあまりにも謎に満ち、超時代的で、そして文字通り稀代の名工のギターをオマージュであれインスパイアドであれ製作することの困難は計り知れません。それはその個性的音響という感性に関わる部分と、生涯300本のギターを製作したと言われながらもその実作に接することの極めてまれなブランドであるという物理的な制約ゆえなのですが、謎と稀少性の両方においてさらに上をゆくビセンテ・アリアスのギターにさえ知悉し、同様にそのinspired model を見事に作り上げてしまったカレル氏ほどにいま世界で相応しい製作家もいないでしょう(イタリアのベテラン製作家、Andrea Tacchi 氏がやはり素晴らしいガルシアモデルを製作していることは特記しておく必要があります)。

ガルシアというと滋味溢れるいかにも渋い響きが思い出されますが、本作においてカレル氏はオリジナルに肉迫しながら、彼らしい知的な見通しの良さと素朴さの中に自然に着地させており、親密かつ力強い1本となっています。そしてその素朴な響きの中に、あのガルシア特有の異様さへの可能性も確かに感じさせるところも、カレル氏の知見だけにとどまらないアーティスト性ゆえの共振を聴くことができ、その点でも本作が稀有な一本だと言うことができます。

高い硬度と柔軟性を併せもつ見事な松材の特性を活かした強い粘りのある発音で、一つ一つの音像が刻印されるような確かさで現れます。音像の肌理そのものは木質のさらっとした触感で、音響はボディの奥底からまるで太鼓を叩くようにパワフルに、しかし最高度の洗練と抑制をもって鳴ります。その深さを聴かせるので、実際には余計な残響は一切ありません(このあたりはいかにもガルシア的)。そして特に中低音から低音の太く彫りの深い、そして一種異様なアイデンティティを有しながらも不思議に全体と調和している響きの在り方もまたガルシア特有のもので、あの個性的な音響設計を見事に再現しています。そして表情、その多感さと繊細さは、素晴らしく音楽的でロマンティックであることも特筆すべき性質の一つとなっています。

表面板力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバーと幅1cm長さ20センチほどの薄い補強板、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、ボディ下部エリアは8本の扇状力木がセンターに配された1本を境に高音側に4本、低音側に3本を配置するガルシア特有の非対称的な扇状配置、ボトム部にはこれら8本の下端を受け止めるようにして2本のクロージングバーがV字型に配置されています。レゾナンスはF#~Gの間に設定されています。

表面板の松材はさりげなく杢の入った迫力のあるもので、横裏板のこれも繊細な野趣を感じさせるマダガスカル・ローズウッドとの対照が印象的。意匠においてもロゼッタは黒を基調とした大変に迫力のあるもので、その細工の緻密さに目を奪われます。ヘッドシェイプはトーレス~ガルシアのスタイルを踏襲しており、そのどこか古風な佇まいが魅力的。弦長は640mm、ネック形状はDシェイプの丸みのあるスタイルでコンパクトなグリップ感となっています。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット サドル余剰1.0~1.5mm)、弦の張りはやや強めとなっています。糸巻はイタリアの高級ブランドAlessi のガルシア・エスペシャルモデルを装着しています。全体は美しいセラック塗装仕上げ。


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