ネック:マホガニー指 板:エボニー塗 装:表板/セラック :横裏板/セラック糸 巻:バーネット弦 高:1弦 2.9mm :6弦 3.8mm[製作家情報]Marco Bortolozzo マルコ・ボルトロッツォ。 イタリア、ミラノに工房を構える製作家。1980年代の初めにイタリア北東部の町ヴィッラノーヴァ・ディ・フォッサルタに生まれる。ワイン畑などの田園風景が広がるこの町で幼いころから父親の使う様々な工具を使って物を作り、同時に音楽の演奏を楽しむような青年時代を過ごした後、大学では工業デザインを専攻。ある日イエローページで偶然に見つけたというギター製作家 Dario Pontiggiaに会いに行き、彼から聞いたアントニオ・デ・トーレスの話が自身の製作家への道を決定づけたと言います。最良の楽器は職人の直の手によって生まれるという製作哲学を持つ彼は、伝統的な工法と治具とにこだわり、木材も製材の段階から自ら行うほど。先人たちへの敬意を保ちながら、柔軟に新しい要素を彼ならではの自然なやり方で盛り込んでいったギターは新しさと懐かしさが無理なく同居した、美しく上品な佇まいのものとなっています。その造作はイタリア屈指と言ってよいほどの精緻さで、決して派手ではないものの中庸の美学を常に感じさせる意匠、そして細部まで揺るがせにしない見事な仕上げ。決して外形から到達しようとするのではなく、しっかりと耳で捉えた音響の着地点も実に的確。誠に端倪すべからざる才能の持ち主と言えるでしょう。現在のイタリア若手の中でも特に注目の俊秀です。[楽器情報]マルコ・ボルトロッツォ 2025年製作 ハウザー1世モデル No.118 新作です。文字通りヘルマン・ハウザー1世のあまりにも有名な1937年製セゴビアモデルを基に、製作家独自の美学を盛り込んで完成させた高密度なオマージュモデルとなっています。マルコ氏の特徴の一つのとして、非常な木工技術による精緻の極みともいえると細工と意匠がまずは挙げられますが、本作においてもそのほとんどartistic とさえいえるほどの精密さに目を奪われます。また意匠において彼は常に慎ましく、華美になり過ぎることを避け、むしろ素材そのもののもつ模様や色合いを活かしそれらを組み合わせることで独自のテクスチャーを生み出す作法を心得ており、それが全体の凛とした姿に表れています。そして音も素晴らしい。その美しい姿そのままに、ハウザーの音がスマートな装いとともに清新な音響として現出してきます。ここでもマルコ氏はハウザー1世特有の音響設計と発音特性をしっかりとつかみ、非常な解像度の高さで再構築して見せています。さらに彼の非凡な感性は、ハウザー1世の内包していたスペイン性とドイツ性との弁証法的帰結とも言える音響(それはつまり西洋音楽的な音響ともいえるものですが)、理念の混淆により生み出された異様ともいえる音響、のエッセンスを汲みつくしたうえで洗練化させており、その音響の絶妙な構成力は驚くほど。そしてハウザーの厳粛ともいえる響き、ここに彼は自身のイタリア性をもさりげなく加えてみせ、なんら厳かに構えることのない、明朗で親密なハウザーモデルとして着地させています。全体に位相差のない定位感のしっかりしたハウザー的な音響設計。適切な重心感覚をもった低音から高音まで乱れのない一本の線を形成するかのような「鍵盤的」なバランス。単音は一切の雑味を排し、それでいて凛とした潤いと艶を湛え、和音では完璧な一つのまとまりを構築しながら構成音の一つ一つをしっかりと聴かせる。そして特にポリフォニックな要素が強い楽曲ではまさに鍵盤のようにその対位法を明確化してみせる(この点スペインの楽器では各声部を異なる楽器が奏でるような室内楽的ともいえる音響で対位法を表現してみせます)。発音は、形の整った音像が美しい点のようにして瞬間的に表れ、その軽い粘りを伴った撥弦における反発感がなんとも心地良く、いかにもハウザー的。上述のようにマルコ氏はこうしたハウザ-1世的特徴をつかみながらそこにミラノ的ともいえる明朗さを実にさりげなく加えているのですが、決して雰囲気を優先させず、音楽的な音としてのあるべき姿として着地させているところなど、彼の職人としての矜持を感じさせ、誠に清々しいものがあります。表面板の力木構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木にこれらの下端をボトムで受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積をカバーするように薄い補強プレートが貼られているという構造。サウンドホール周りとネック脚周辺を覆うようにして特徴的な形で補強プレートが貼られているのに加え、ネック脚部分の加工もここだけで一つの木工細工を思わせるような特徴的な細工が施されています。また表面板と横板との接合部分に接着されているペオネス(木製の小型のブロック、たいていは断面が直角三角形をしたもの)は断面が三角形のものと薄く平坦なものとが交互に貼り付けられており、これはマルコ氏のオリジナルの発案によるもの。全体は美しいセラック塗装仕上げ、表面板の松、横裏板のブラジリアン・ローズウッドともにマルコ氏厳選のものが使用されています。裏板は4ピース仕様ですが、この接ぎ部分における細工もさりげなく細やかな仕事がされており、なんとも心くすぐられるポイントになっています。ネックは薄めのDシェイプで角の取れた形状になっておりとてもコンパクトなグリップ感、ヘッドとの接合部分はこれもオリジナルに則ってVジョイント方式が採用されています。糸巻はドイツの高級ブランド Barnett 製を装着しています。ラベルはオークの葉が描かれた洒落たデザイン。生まれ故郷ヴィッラノーヴァの町に生えていたオークの老木と幼少の頃親しんだ思い出が始まりで、ミラノに移り工房を立ち上げた時、自然に庭にオークの新芽が生えてきてみるみる育っていったという。そこに新たな出発の徴を感じた彼はそのオークの葉をブランドラベルとしたのだそう。
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ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
:横裏板/セラック
糸 巻:バーネット
弦 高:1弦 2.9mm
:6弦 3.8mm
[製作家情報]
Marco Bortolozzo マルコ・ボルトロッツォ。 イタリア、ミラノに工房を構える製作家。1980年代の初めにイタリア北東部の町ヴィッラノーヴァ・ディ・フォッサルタに生まれる。ワイン畑などの田園風景が広がるこの町で幼いころから父親の使う様々な工具を使って物を作り、同時に音楽の演奏を楽しむような青年時代を過ごした後、大学では工業デザインを専攻。ある日イエローページで偶然に見つけたというギター製作家 Dario Pontiggiaに会いに行き、彼から聞いたアントニオ・デ・トーレスの話が自身の製作家への道を決定づけたと言います。
最良の楽器は職人の直の手によって生まれるという製作哲学を持つ彼は、伝統的な工法と治具とにこだわり、木材も製材の段階から自ら行うほど。先人たちへの敬意を保ちながら、柔軟に新しい要素を彼ならではの自然なやり方で盛り込んでいったギターは新しさと懐かしさが無理なく同居した、美しく上品な佇まいのものとなっています。その造作はイタリア屈指と言ってよいほどの精緻さで、決して派手ではないものの中庸の美学を常に感じさせる意匠、そして細部まで揺るがせにしない見事な仕上げ。決して外形から到達しようとするのではなく、しっかりと耳で捉えた音響の着地点も実に的確。誠に端倪すべからざる才能の持ち主と言えるでしょう。現在のイタリア若手の中でも特に注目の俊秀です。
[楽器情報]
マルコ・ボルトロッツォ 2025年製作 ハウザー1世モデル No.118 新作です。
文字通りヘルマン・ハウザー1世のあまりにも有名な1937年製セゴビアモデルを基に、製作家独自の美学を盛り込んで完成させた高密度なオマージュモデルとなっています。
マルコ氏の特徴の一つのとして、非常な木工技術による精緻の極みともいえると細工と意匠がまずは挙げられますが、本作においてもそのほとんどartistic とさえいえるほどの精密さに目を奪われます。また意匠において彼は常に慎ましく、華美になり過ぎることを避け、むしろ素材そのもののもつ模様や色合いを活かしそれらを組み合わせることで独自のテクスチャーを生み出す作法を心得ており、それが全体の凛とした姿に表れています。
そして音も素晴らしい。その美しい姿そのままに、ハウザーの音がスマートな装いとともに清新な音響として現出してきます。ここでもマルコ氏はハウザー1世特有の音響設計と発音特性をしっかりとつかみ、非常な解像度の高さで再構築して見せています。さらに彼の非凡な感性は、ハウザー1世の内包していたスペイン性とドイツ性との弁証法的帰結とも言える音響(それはつまり西洋音楽的な音響ともいえるものですが)、理念の混淆により生み出された異様ともいえる音響、のエッセンスを汲みつくしたうえで洗練化させており、その音響の絶妙な構成力は驚くほど。そしてハウザーの厳粛ともいえる響き、ここに彼は自身のイタリア性をもさりげなく加えてみせ、なんら厳かに構えることのない、明朗で親密なハウザーモデルとして着地させています。
全体に位相差のない定位感のしっかりしたハウザー的な音響設計。適切な重心感覚をもった低音から高音まで乱れのない一本の線を形成するかのような「鍵盤的」なバランス。単音は一切の雑味を排し、それでいて凛とした潤いと艶を湛え、和音では完璧な一つのまとまりを構築しながら構成音の一つ一つをしっかりと聴かせる。そして特にポリフォニックな要素が強い楽曲ではまさに鍵盤のようにその対位法を明確化してみせる(この点スペインの楽器では各声部を異なる楽器が奏でるような室内楽的ともいえる音響で対位法を表現してみせます)。発音は、形の整った音像が美しい点のようにして瞬間的に表れ、その軽い粘りを伴った撥弦における反発感がなんとも心地良く、いかにもハウザー的。上述のようにマルコ氏はこうしたハウザ-1世的特徴をつかみながらそこにミラノ的ともいえる明朗さを実にさりげなく加えているのですが、決して雰囲気を優先させず、音楽的な音としてのあるべき姿として着地させているところなど、彼の職人としての矜持を感じさせ、誠に清々しいものがあります。
表面板の力木構造は、サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に一本ずつのハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木にこれらの下端をボトムで受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積をカバーするように薄い補強プレートが貼られているという構造。サウンドホール周りとネック脚周辺を覆うようにして特徴的な形で補強プレートが貼られているのに加え、ネック脚部分の加工もここだけで一つの木工細工を思わせるような特徴的な細工が施されています。また表面板と横板との接合部分に接着されているペオネス(木製の小型のブロック、たいていは断面が直角三角形をしたもの)は断面が三角形のものと薄く平坦なものとが交互に貼り付けられており、これはマルコ氏のオリジナルの発案によるもの。
全体は美しいセラック塗装仕上げ、表面板の松、横裏板のブラジリアン・ローズウッドともにマルコ氏厳選のものが使用されています。裏板は4ピース仕様ですが、この接ぎ部分における細工もさりげなく細やかな仕事がされており、なんとも心くすぐられるポイントになっています。ネックは薄めのDシェイプで角の取れた形状になっておりとてもコンパクトなグリップ感、ヘッドとの接合部分はこれもオリジナルに則ってVジョイント方式が採用されています。糸巻はドイツの高級ブランド Barnett 製を装着しています。
ラベルはオークの葉が描かれた洒落たデザイン。生まれ故郷ヴィッラノーヴァの町に生えていたオークの老木と幼少の頃親しんだ思い出が始まりで、ミラノに移り工房を立ち上げた時、自然に庭にオークの新芽が生えてきてみるみる育っていったという。そこに新たな出発の徴を感じた彼はそのオークの葉をブランドラベルとしたのだそう。