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ゲルハルト・オルディゲス Gerhard Oldiges



New Arrival
〔商品情報〕
楽器名ゲルハルト・オルディゲス Gerhard Oldiges
カテゴリ輸入クラシック 新作
品番/モデル’’Homenaje’’ Romanillos 1973
弦 長650mm
ドイツ Germany
製作年2025年
表 板松 Solid Spruce
裏 板中南米ローズウッド South American Rosewood
程 度※10
定 価4,400,000 円
販売価格(税込)4,180,000 円
付属品ハードケース(ヒスコック)

ネック:シポ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:シェラー
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 4.0mm

〔製作家情報〕
ゲルハルト・オルディゲス Gerhard J.Oldiges 1955年ドイツ生まれ。大学卒業後にギターやリュートなど幾つかの工房で修業を重ねたのち、1985年にマイスター制度による国家試験に合格しゲゼレを取得、1986年に創設当初のLakewood Guitars のリペア部門で働くことになります。1988年にベルギーで開催されたホセ・ルイス・ロマニリョス(1932~2022)のギター製作セミナーに参加し、この名工から彼のその後の方向性を決定づけるほどの影響を受けることになります。1989年には再び国家試験に合格しマイスターの称号を得るとともに、自身の工房を設立。

ロマニリョスとは師弟として、そして良き友人としてその後も関係は続き、スペイン、シグエンサで開催された講習会ではトビアス・ブラウンらとともに助手を務めています(この講習会には尾野薫、田邊雅啓、中野潤らが参加している)。また彼の畢生の名著と言える「アントニオ・デ・トーレス その生涯と作品」のドイツ語訳を刊行するなどギター文化を拡げてゆくためのアクションも積極的に行っています。自身もやはりトーレスを起点とするスペインの伝統的なギター、そして特にハウザー1世の製作美学に傾倒し、現在もこれらのマエストロたちのギターを規範とした、外観、音色ともに味わい深い楽器を製作。名手ジュリアン・ブリームが所有するなどプロギタリストからも高い評価を得て、非常に限られた製作本数ながら世界中で愛用者を獲得している、現代ドイツの代表的製作家の一人。


〔楽器情報〕
ゲルハルト・オルディゲス 2025年新作 ‘Homenaje’ の入荷です。名手ジュリアン・ブリームが愛奏したホセ・ルイス・ロマニリョス1973年製のギター Serial No.1930-1-73 を基に製作されたもので、2022年に惜しまれつつこの世を去ったこの稀代の名工への文字通りのオマージュモデル。(※ちなみにオリジナルのSerial No.の「1930」はロマニリョスが使用したヘルマン・ハウザー1世の表面板テンプレートが1930年製のものであったこと、「1」はこの型を使用しての1番目のギターであること、「73」は1973年を示しています)

20世紀後半以降のクラシックギター製作においてトラディショナルであることの意義を問い続け、その指標となったロマニリョス。その製作哲学にじかに接し自らの方向性を確立していったオルディゲスによる本作は、クラシックギターの純然たる本質を提示することの覚悟さえ感じさせる、濃密な美しさに満ちた一本に仕上げられています。

全体は1973年製オリジナルをベースとしながら、そこにオルディゲス自身の創意工夫、あるいは彼が直接ロマニリョス本人とまさにこの1973年製について議論したことを基にした改善などが施されており、示唆に満ちたものとなっています。ロマニリョスといえばまず何よりもあの外観のデザインが想起されますが、本作の完成度は世界屈指と言ってもよいほどで、製作家自身により厳しく選定されたヨーロピアンスプルースとブラジリアンローズウッドの目に鮮やかなコントラスト、コルドバのモスクの柱廊をイメージした有名なロゼッタ、ボディパーフリングとタイブロックの象嵌の精緻な美しさと気品、そしてこれらの細部の強さを一つの流れにして受けとめるヘッドデザインに至るまでまさに芸術的な美しさ。この点、ロマニリョス本人の作には細部に手仕事(決して達者とまでは言えなかったのですが)の生々しさが刻印され、それが独特の立体感を生み出しているのに対し、オルディゲスは同様に手の素朴さを残しつつ、絵画的なデザインとしての完成度が際立った仕上がり。

そして音が素晴らしい。ロマニリョス的音響と発音特性を見事にとらえながら、オルディゲスならではの解像度の高さとあくまでも上品な慎ましさをもって着地させており、もはやオマージュというよりも最高度の「共作」だとの感慨さえも抱かせるものとなっています。跳躍するような発音、室内楽的なパースペクティブを持った音響設計もそうですが、特筆すべきは単音における、声に比するほどの繊細な震えをもった歌もまたロマニリョス的で(あまり言われませんがロマニリョスのギターはスペインでも屈指の「歌う」楽器だと言えます)、まさに弦の運動が有機的に音へと変換されているような生々しい密度があります。それは機能面でも効果を発揮して、速い発音から終止までの持続、スタッカートやスラーなどの曖昧さのない身振り、自然なスピード感を生み出すなど、曲の要求に十全に反応します。音像は程よく角が取れた、ほんのりと木質の肌理を纏わせたような魅力的なもの、ここでもその明る過ぎず慎ましい色味がなんとも愛らしく、そして力強い。

表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本で計3本のハーモニックバーを設置し、それぞれ高音側と低音側に1ヵ所ずつ開口部が設けられています。それら3本の開口部をくぐり抜けるように高音側と低音側とにそれぞれ一本の力木が表面板の木目にほぼ沿うような方向で設置されています(設置範囲は一番上と一番下のバーの間、ちょうど開口部の位置で両端が定められています)。サウンドホールの周りは大きなロゼッタで覆われたエリアをそのまま補強するようにパッチ板が貼られています。扇状力木は左右対称7本が設置され、ボトム部でこれらの先端を受け止めるように逆ハの字型に配置された2本のクロージングバー。駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い補強板が貼られています。表板と横板との接合部分には形状の異なる2種類のペオネスが設置されているのですが、くびれ部より上は断面が三角形のもの、同じく下はすべて断面が椅子型のものを設置しています。7本の扇状力木は中央の3本が幅6.5mm高さ5mm、両外側2本ずつの計4本は幅3.5mm高さ2.5mmとサイズを変えており、これはオルディゲスがロマニリョスと1973年製モデルに関して議論をした際に出たアイディアで、ロマニリョス自身もその後の自作でしばしば採用しています。またハーモニックバーの開口部を通過して設置される力木はオリジナルでは2本ずつの計4本となっていますが、本作では1本に、しかも表面板木目に対して平行ではなくほんのわずかに斜めにして設置されています。駒板位置のパッチ補強もまたオリジナルと異なる仕様ですが、所有していたブリーム自身が後に同様のパッチプレートを追加しており、オルディゲスはこれに倣ったもの。さらにこれは力木構造とは別になりますが、横板は外側がブラジリアンローズウッド、内側は梨(Pear)の木を貼り付けて二重構造にしたものを使用(ただし厚みは併せて2mmで設定)しています。レゾナンスはGの少し下に設定されています。

ネック形状は殆どCに近いほどに丸みのあるDシェイプで薄めに作られているのでコンパクトなグリップ感。弦高値は3.2/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.5~3.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く設定することも可能ですが、弦の張りは中庸からやや弱めなので現在値のままでも左手はストレスを感じずに弾くことができます。ネックとヘッドプレートはVジョイント方式。駒板とヘッド天板もブラジリアンローズウッドを使用。糸巻はドイツの最高級ブランドScheller製で黒蝶貝ボタン仕様のものを装着しています。

現在もなおその広範な影響の深さを認識させられるように世界中の製作家(特に若い世代の充実した仕事が顕著ですが)が同様にオマージュをささげているホセ・ロマニリョス。その中でも、おそらくいま最もこれを製作するに相応しい製作家による、その極点とも言える逸品です。


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