ネック:セドロ指 板:エボニー塗 装:セラック糸 巻:シェラー弦 高:1弦 2.9mm /6弦 4.0mm【製作家情報】ペール・ハルグレンPer Hallgren スウェーデンの製作家。1986年より製作を始める。当時スウェーデンでは楽器製作に関する公的な教育機関がなく、ペール氏曰く「あまり上質ではない」ギターメーカーから情報をえるのがやっとというような環境であったため、ほぼ製作ガイドブックなどを頼りに独学で製作を学んでいました。1990年代にカーディフ大学のベルナール・リチャードソン博士の知遇を得て、特にギターの音響学に就いての博士の膨大な研究成果を実地に学ぶ機会を得たことが、彼の最大の契機となります。もともとスペインのトーレスから始まる伝統的な工法に深く傾倒していた彼ですが、そこに現代のテクノロジーを用いて科学的なアプローチを試み、同時に同国のすぐれたギタリストたちの交流と頻繁な意見交換とを行い、彼独自の感覚であるべき音として帰結させたそのギターは、ヨーロッパのメインストリームで連綿と続いてきた伝統が北欧の地でまったく新しい方法で一気に洗練されたかのような新しさをまとったものとなっています。精緻を極めた造作と洒落た意匠、セラックニスの見事な仕上げはどれも特筆すべきもので、デザインにはか彼が愛するスペインギターの巨匠たちへのオマージュと同時に、北欧独自の歴史的な意匠などが盛り込まれ、非常に美しいものになっています。[楽器情報]ペール・ハルグレン 2021年製 No.281 Usedの入荷です。 アントニオ・デ・トーレスをはじめとする伝統的なスタイルに立脚しながらそこに綿密データによる科学的なアプローチを試み、そして彼自身の北欧的な感性によって仕上げられた、清爽な力強さに満ちた一本。ベルナール・リチャードソン博士による音響学研究が彼のキャリア初期において道標となったことは自身によって語られるところですが、そのリチャードソンもまた、楽器にとっての良い音響とは最後は感性的な判断によって決定的となるとハルグレン氏にアドバイスしていることは興味深い。そして実際に氏は楽器を成形し弦を張った段階で、塗装による仕上げを行う前におよそ数か月をかけて試奏し楽器のフィジカルな反応に極限まで自身の感性を研ぎ澄ませながら構造部分への最終的な精錬を行うのだとのこと。結果完成したそのモデルは、緻密に構築された音響バランスと音楽に必要な繊細さ、力強さ、身振りと表情、そのそれぞれの幅広く豊かな振幅を備えたものとなっており、伝統的で、そして新しい。例えばスペインギターにおける、各音の微妙な凹凸感が全体に独特の響きの肌理やパースペクティブ(高音のメロディの前景化など)を生み出すのに対し、ここでハルグレン氏が構築しているのはすべての音が等しく前景化するようなプロジェクションを持ちながら、各声部がその明確な彫塑性によって声部ごとのアイデンティティを明確化しているような音響で、言いかえれば歌と伴奏がそれぞれ同じ強度を持っているのにお互いに抵触することのないような、その意味で極めて(モダンギターの方向性とは全く異なる)現代的なフェイズ感を持った音響設計となっています。内部構造も基本的にスペイン伝統工法をベースとした扇状力木配置。しかしそのそれぞれの配置関係は独特のもので、それぞれの間隔、角度、長さが微妙に異なる上、サウンドホール下のハーモニックバーの微妙な傾斜、ボトム部のクロージングバーが高音側に一本のみ配されしかも着地点がボトム中央ではなく低音側にやや寄った位置になっているなど全体に細かに計算された左右非対称の配置。更には裏板のバーに関しても通常の3本のバーの他、ラディアル状(放射状)配置された力木が別に設置されており、その一部がバーをトンネル状に貫通し交差しています。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。全面セラック塗装の極めて美しい仕上げで、ロゼッタは北欧の伝統的な意匠をモチーフにしたものだとのこと。ネックはややラウンドがかかったDシェイプタイプ。糸巻きはドイツの高級糸巻きシェラー社製を装着。表面板に数か所の軽微な弾きキズが見られるほかはわずかに衣服等の擦れあとがみられるのみで、大変に良好な状態です。ネック、フレット等演奏性に関わる部分も問題ありません。HISCOX ハードケース付
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:シェラー
弦 高:1弦 2.9mm /6弦 4.0mm
【製作家情報】
ペール・ハルグレンPer Hallgren スウェーデンの製作家。1986年より製作を始める。当時スウェーデンでは楽器製作に関する公的な教育機関がなく、ペール氏曰く「あまり上質ではない」ギターメーカーから情報をえるのがやっとというような環境であったため、ほぼ製作ガイドブックなどを頼りに独学で製作を学んでいました。1990年代にカーディフ大学のベルナール・リチャードソン博士の知遇を得て、特にギターの音響学に就いての博士の膨大な研究成果を実地に学ぶ機会を得たことが、彼の最大の契機となります。もともとスペインのトーレスから始まる伝統的な工法に深く傾倒していた彼ですが、そこに現代のテクノロジーを用いて科学的なアプローチを試み、同時に同国のすぐれたギタリストたちの交流と頻繁な意見交換とを行い、彼独自の感覚であるべき音として帰結させたそのギターは、ヨーロッパのメインストリームで連綿と続いてきた伝統が北欧の地でまったく新しい方法で一気に洗練されたかのような新しさをまとったものとなっています。精緻を極めた造作と洒落た意匠、セラックニスの見事な仕上げはどれも特筆すべきもので、デザインにはか彼が愛するスペインギターの巨匠たちへのオマージュと同時に、北欧独自の歴史的な意匠などが盛り込まれ、非常に美しいものになっています。
[楽器情報]
ペール・ハルグレン 2021年製 No.281 Usedの入荷です。 アントニオ・デ・トーレスをはじめとする伝統的なスタイルに立脚しながらそこに綿密データによる科学的なアプローチを試み、そして彼自身の北欧的な感性によって仕上げられた、清爽な力強さに満ちた一本。ベルナール・リチャードソン博士による音響学研究が彼のキャリア初期において道標となったことは自身によって語られるところですが、そのリチャードソンもまた、楽器にとっての良い音響とは最後は感性的な判断によって決定的となるとハルグレン氏にアドバイスしていることは興味深い。そして実際に氏は楽器を成形し弦を張った段階で、塗装による仕上げを行う前におよそ数か月をかけて試奏し楽器のフィジカルな反応に極限まで自身の感性を研ぎ澄ませながら構造部分への最終的な精錬を行うのだとのこと。
結果完成したそのモデルは、緻密に構築された音響バランスと音楽に必要な繊細さ、力強さ、身振りと表情、そのそれぞれの幅広く豊かな振幅を備えたものとなっており、伝統的で、そして新しい。例えばスペインギターにおける、各音の微妙な凹凸感が全体に独特の響きの肌理やパースペクティブ(高音のメロディの前景化など)を生み出すのに対し、ここでハルグレン氏が構築しているのはすべての音が等しく前景化するようなプロジェクションを持ちながら、各声部がその明確な彫塑性によって声部ごとのアイデンティティを明確化しているような音響で、言いかえれば歌と伴奏がそれぞれ同じ強度を持っているのにお互いに抵触することのないような、その意味で極めて(モダンギターの方向性とは全く異なる)現代的なフェイズ感を持った音響設計となっています。
内部構造も基本的にスペイン伝統工法をベースとした扇状力木配置。しかしそのそれぞれの配置関係は独特のもので、それぞれの間隔、角度、長さが微妙に異なる上、サウンドホール下のハーモニックバーの微妙な傾斜、ボトム部のクロージングバーが高音側に一本のみ配されしかも着地点がボトム中央ではなく低音側にやや寄った位置になっているなど全体に細かに計算された左右非対称の配置。更には裏板のバーに関しても通常の3本のバーの他、ラディアル状(放射状)配置された力木が別に設置されており、その一部がバーをトンネル状に貫通し交差しています。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。
全面セラック塗装の極めて美しい仕上げで、ロゼッタは北欧の伝統的な意匠をモチーフにしたものだとのこと。ネックはややラウンドがかかったDシェイプタイプ。糸巻きはドイツの高級糸巻きシェラー社製を装着。表面板に数か所の軽微な弾きキズが見られるほかはわずかに衣服等の擦れあとがみられるのみで、大変に良好な状態です。ネック、フレット等演奏性に関わる部分も問題ありません。HISCOX ハードケース付