[楽器情報] ローランド・シャルバトケ 2002年製 Used の入荷です。表面板力木配置はサウンドホール上側(ネック側)に長短2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、サウンドホール両側(高音側と低音側)はそれぞれ2本ずつの短い力木がX状に交差してハーモニックバーによって区切られた範囲を覆うようにして設置されています。表面板下部は左右対称7本の扇状力木ですが、7本のうちセンターの3本はサウンドホールの直径の幅に収まるように寄り添ってほぼ平行に設置されており、少し離れて残りの4本が扇状を形成してゆくようにして全体を配置。またスタンダードな設計ならこれらの力木を受け止めるような形でボトム部に2本のバーをV字型に配置するのですが、ここでは1本のバーが横向きに設置されて力木の先端を受け止め、さらにエンドブロックにほぼ接する位置に短いもう一本のバーを設置しています。そして駒板位置には薄い補強プレートが貼られ、その両端に近い位置からそれぞれ2本ずつの短い力木が近接する横板に向かって伸びるようにして設置されているという全体の構造になっています。レゾナンスはFの少し上に設定されています。
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック /横裏板 ラッカー
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 4.0mm
[製作家情報]
ローランド・シャルバトケ Roland Scharbatke 1952年 ドイツ、テューリンゲン州ゴータに生まれる(カール・マルクスの有名な「ゴータ綱領批判」のゴータです)。1959年7歳の時に家族でノルトライン=ヴェストファーレン州のイーザーローンに移り、現在も彼はこの土地で製作を続けています。イーザーローンは1959年当時西ドイツ側に位置し、東ドイツのゴータから西側に移るのは(のちにベルリンの壁建設に象徴される厳しい分断が行われる前の国内情勢だったとは言え)、家族が揃って移住するには非常な困難があったようです。しかしながら幸福にも彼は家族と共にイーザーホーンに文字通り安住することができ、やがて家具職人の徒弟として働き始めます。この時ギターの演奏に熱中し同時に製作にも興味を持つようになっていた彼は1979年にまず家具職人としてのマイスター試験に合格した後、バイエルンの製作家 Gerold Karl Hannabach(1928~2015 ※彼の叔父のAnton Hannabachは弦メーカーのハナバッハを故郷チェコで創業した人物で、バイエルンに移住後にその息子Arthur が事業を引き継いでいます。Geroldは弦製造には関わらず、完全に独立して弦楽器職人としての道を歩みます)に弟子入り、すでに家具職人として一流の腕を持っていたシャルバトケは一気に楽器製作の技術を習得し、1989年には撥弦楽器製作の職人としてもマイスター試験に合格、同年に自身の工房を起ち上げブランドを開始します。
彼の楽器は何と言っても精緻な木工技術によるシンプルかつ審美的な造作とデザインが特筆されますが、あのワイスガーバーさえ凌ぐほどの多産と多ジャンルでの製作を展開した師Gerold の影響からか、音響に関しては広範な知見に基づいた独自の美学を感じさせるものになっています。スペイン=ドイツのクラシックギターの伝統をあくまでも基本として慎重に逸脱を回避しながら、ダブルトップなどのモダンギターとも一線を画す現代性を有するに至っています。
[楽器情報]
ローランド・シャルバトケ 2002年製 Used の入荷です。表面板力木配置はサウンドホール上側(ネック側)に長短2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、サウンドホール両側(高音側と低音側)はそれぞれ2本ずつの短い力木がX状に交差してハーモニックバーによって区切られた範囲を覆うようにして設置されています。表面板下部は左右対称7本の扇状力木ですが、7本のうちセンターの3本はサウンドホールの直径の幅に収まるように寄り添ってほぼ平行に設置されており、少し離れて残りの4本が扇状を形成してゆくようにして全体を配置。またスタンダードな設計ならこれらの力木を受け止めるような形でボトム部に2本のバーをV字型に配置するのですが、ここでは1本のバーが横向きに設置されて力木の先端を受け止め、さらにエンドブロックにほぼ接する位置に短いもう一本のバーを設置しています。そして駒板位置には薄い補強プレートが貼られ、その両端に近い位置からそれぞれ2本ずつの短い力木が近接する横板に向かって伸びるようにして設置されているという全体の構造になっています。レゾナンスはFの少し上に設定されています。
一つの位相の中に低音から高音までが収まるようなドイツ的と言える音響設計ですが、低音のまさに「Bass」としてのキャラクターと高音の凛とした「Voice」との明確な対比があり、特に低い重心感覚とともにたっぷりと響く低音は魅力的。基音のはっきりした音像に響箱の容量を活かした奥行きが加わり、上品なリヴァーヴ感を生み出しています。またこれは「ドイツ的」ギターとしては異質とさえ言えるほどによく歌うロマンティックな表情があり、ここに非常に鋭敏な発音機能によるスマートな音の身振りが加わり、繊細かつダイナミックな表現力を持つに至っています。ただしあえて指摘すれば特に高音でいくつかの音は共鳴が強く出てしまうところがあります。
日本美術に影響を受けたという「ミニマルな」デザインは特にスクエアなヘッドシェイプににカナダの高級糸巻ブランドRodgersによるカスタムメイド品をすっきりとインレイさせるというこだわりに表れています。また赤と茶を基調としてそこに極めて繊細な黄緑の意匠をあしらったロゼッタは杉材の渋い飴色の中に素晴らしく調和し、駒板のタイブロックは象牙に白蝶貝をインレイしたものを装着して全体の上品なアクセントとなっています。
割れや改造等の大きな修理歴はありません。表面板は指板両脇からサウンドホール周りにかけてのスクラッチあとや弾きキズ、ボトム付近に数か所の打痕等ありますが年代相応のレベルと言えます。横裏板は演奏時に胸や腕の当たる部分に塗装の擦れは見られますが、その他は衣服等によるほんのわずかな摩擦あとのみ、ネック裏に関しても全体に爪キズはあるものの浅く軽微なものなのでそれほど目立ちません。演奏性に関わる部分についても良好で、ネックは適正な状態、フレットも1~5Fでわずかに摩耗見られますが問題ありません。指板高音側は20フレット仕様。ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな形状、弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)に設定されています。ナットとサドルはともに象牙製で、サドルには各弦位置に深めに溝が切ってあり、弦をしっかりと固定しています(この弦の下端位置を基準にしてサドル余剰は1.0~2.0mmあります)。右手左手ともに音の反応もリニアニティも非常に優れておりその点でのストレスはほとんどありませんが、弦の張りは強めなのでお好みに応じて使用弦のテンション設定はご変更ください。重量は1.54㎏。