ネック:セドロ指 板:エボニー塗 装:表板/セラック :横裏板/セラック糸 巻:アレッシー弦 高:1弦 2.3mm :6弦 3.6mm〔製作家情報〕テオドロ・ペレス Teodoro Perez 1952年スペイン、ソリア生まれ。1966年ホセ・ラミレス3世工房に弟子入りし、当時の職工長であったマリアーノ・テサーノス・マルティン(1915~1982)やパウリーノ・ベルナベ(1932~2007)のもと、ラミレス黄金期をともにしながら製作修行します。1969年にはマスタークラフツマンとして資格を得て、GPMのイニシャル(ペレスのフルネームはTeodoro Gregorio Perez Mariblanca)で製作を開始、その後1991年にラミレスを辞するまでの26年間で約1400本ものギターを製作したといいます。ラミレス工房から独立後は、同工房の僚友であったマリアーノ・テサーノス(1949~ テサーノス・マルティンの息子)と共同作業を開始。「M・テサーノス・ペレス」のラベルでギターを製作し好評を博します。2005年からは独立して、現在息子セルヒオ・ペレス(1980~)、娘のベアトリス・ペレス(1978~)、娘婿のマルコ.A テヘダ と共に工房を運営し、自身のラベル「Teodoro Perez」でギターを製作しています。ラミレス系マドリッド派の中心的存在といえるブランドで、例えば同じ流れを汲むパウリーノ・ベルナベの個性的な音響設計と比して、ラミレスを含む伝統的スペインギターのエッセンスをうまく抽出し、無理なく着地させる職人としてのバランス感覚が見事。全体の精緻な造作、重厚で華やかな音色、演奏性における完成度の高さ、外観における豪奢な造りとセンスなどはどれも非常なクオリティを有しており、もっとも円満なスペイン製手工品ブランドの一つとして人気を博してきました。彼のフラメンコモデルはギタリストの沖仁が使用していることで日本でも有名。〔楽器情報〕テオドロ・ペレス 製作 マエストロ・エスペシャル Maestro Especial 2018年 No.1184 Used です。彼の50周年記念モデル「Aniversario」を除くと、通常のラインナップ中で最もハイスペックなモデルとなります。ミドルレンジのモデルである「Maestro」や「Concierto」などと比較するとより高級で良質な材が厳選されており、加えてパーフリング、ライニング、ロゼッタ、駒板のタイブロックなどの装飾で凝った意匠が為されており、外観のアピアランスの点でも上位モデルにふさわしい一本となっています。これらの装飾は存在感がありながらも決して華美に過ぎず、むしろある種の落ち着いた雰囲気さえ全体に付加する効果さえあることろは彼の慎ましさの美学ゆえと言えるでしょう。本器は表面板にカナディアンレッドセダーを使用していますが、その柔らかな茶とこれらの意匠とのコンビネーションも洒脱な雰囲気の中に絶妙にまとめられています。横裏板のマダガスカル・ローズウッドの木目もフォトジェニック。ラミレス系マドリッド派特有の、低音から高音までが一つのフェーズの中に収まり、すべての音が同位相で等しく主張してくるような音響ですが、ラミレスのように特に高音部を前景化させることで「歌う楽器」としての特性を主張するのではなく、あくまでもすべてが均一のバランスで前景化してくるような感覚があります。しかし決して平板な音響と言うわけではなく、響箱を十全にそして適切に響かせることで自然な奥行きを生み出しており、全体に悠揚たる重厚感を醸し出しているところはいかにもマドリッドのブランドらしい。さらに魅力的なのは音色で、これもラミレスの艶やかな響きとの比較で言えば、やや乾いた木質の音像で、そのさらっとした触感が柔和で落ち着いたニュアンスを全体に生み出しており、杉材とマダガスカルローズ材との相乗効果からかどこか翳を帯びたような奥ゆかしささえ感じさせる響きは魅力的。表面板力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に一本のハーモニックバーと厚さ1mm未満の補強プレートがバーとネック脚の間のエリアのほとんどを覆うように1枚貼られており、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーが設置されています。この2本のバーの間はサウンドホール高音側と低音側にそれぞれ1本ずつの短い力木が近接する横板のカーブに沿うようにして設置され、ホール周りには同心円状の補強プレートが貼られています。ボディ下部はホール下側のハーモニックバーの中央を起点として高音低音の両横板に向かって斜めに下がってゆくようにして設置された各一本のバー、この2本のバーの下側からボトム部にかけては計5本(正確には6本)の左右対称の力木が平行に表面板木目に沿って設置されており、駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い補強プレートが貼られています。5本の力木のうち中央の3本がこの補強プレートの上を通過していますが低音側の一本はプレートの両側でセパレートされています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。上記の力木構造は同じマドリッドの、かつて共同作業をしていたこともあるマリアーノ・テサーノス、またパウリーノ・ベルナベのメインモデルの構造と特徴をほぼ一にしており、特にサウンドホール下側ハーモニックバーの中央から左右に1本ずつ斜めのバーが配置され、力木は3~5本が扇状形ではなく互いに平行に配されるところはこれらのブランドに共通しています。割れや改造などの大きな修理履歴はありません。全体はセラック塗装仕上げ。表面板の指板両脇やサウンドホール高音側などに弾き傷やスクラッチあとがやや多くあります。 横裏板は衣服の摩擦あとのみのきれいな状態。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分は良好です。ネック形状は薄めのDシェイプでコンパクトな握り心地、弦高値は2.3mm/3.6mm(1弦/6弦 12フレット)となっており、サドル余剰は1.0~2.0mmあります。ネックの差し込み角度、ネックシェイプ、弦高設定などトータルに弾きやすい設定となっており、両手ともにストレスを感じさせません。糸巻はイタリアの高級ブランドAlessi 製を装着、こちらも機能的に良好です。
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ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:表板/セラック
:横裏板/セラック
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 2.3mm
:6弦 3.6mm
〔製作家情報〕
テオドロ・ペレス Teodoro Perez 1952年スペイン、ソリア生まれ。
1966年ホセ・ラミレス3世工房に弟子入りし、当時の職工長であったマリアーノ・テサーノス・マルティン(1915~1982)やパウリーノ・ベルナベ(1932~2007)のもと、ラミレス黄金期をともにしながら製作修行します。1969年にはマスタークラフツマンとして資格を得て、GPMのイニシャル(ペレスのフルネームはTeodoro Gregorio Perez Mariblanca)で製作を開始、その後1991年にラミレスを辞するまでの26年間で約1400本ものギターを製作したといいます。ラミレス工房から独立後は、同工房の僚友であったマリアーノ・テサーノス(1949~ テサーノス・マルティンの息子)と共同作業を開始。「M・テサーノス・ペレス」のラベルでギターを製作し好評を博します。2005年からは独立して、現在息子セルヒオ・ペレス(1980~)、娘のベアトリス・ペレス(1978~)、娘婿のマルコ.A テヘダ と共に工房を運営し、自身のラベル「Teodoro Perez」でギターを製作しています。
ラミレス系マドリッド派の中心的存在といえるブランドで、例えば同じ流れを汲むパウリーノ・ベルナベの個性的な音響設計と比して、ラミレスを含む伝統的スペインギターのエッセンスをうまく抽出し、無理なく着地させる職人としてのバランス感覚が見事。全体の精緻な造作、重厚で華やかな音色、演奏性における完成度の高さ、外観における豪奢な造りとセンスなどはどれも非常なクオリティを有しており、もっとも円満なスペイン製手工品ブランドの一つとして人気を博してきました。彼のフラメンコモデルはギタリストの沖仁が使用していることで日本でも有名。
〔楽器情報〕
テオドロ・ペレス 製作 マエストロ・エスペシャル Maestro Especial 2018年 No.1184 Used です。彼の50周年記念モデル「Aniversario」を除くと、通常のラインナップ中で最もハイスペックなモデルとなります。ミドルレンジのモデルである「Maestro」や「Concierto」などと比較するとより高級で良質な材が厳選されており、加えてパーフリング、ライニング、ロゼッタ、駒板のタイブロックなどの装飾で凝った意匠が為されており、外観のアピアランスの点でも上位モデルにふさわしい一本となっています。これらの装飾は存在感がありながらも決して華美に過ぎず、むしろある種の落ち着いた雰囲気さえ全体に付加する効果さえあることろは彼の慎ましさの美学ゆえと言えるでしょう。本器は表面板にカナディアンレッドセダーを使用していますが、その柔らかな茶とこれらの意匠とのコンビネーションも洒脱な雰囲気の中に絶妙にまとめられています。横裏板のマダガスカル・ローズウッドの木目もフォトジェニック。
ラミレス系マドリッド派特有の、低音から高音までが一つのフェーズの中に収まり、すべての音が同位相で等しく主張してくるような音響ですが、ラミレスのように特に高音部を前景化させることで「歌う楽器」としての特性を主張するのではなく、あくまでもすべてが均一のバランスで前景化してくるような感覚があります。しかし決して平板な音響と言うわけではなく、響箱を十全にそして適切に響かせることで自然な奥行きを生み出しており、全体に悠揚たる重厚感を醸し出しているところはいかにもマドリッドのブランドらしい。さらに魅力的なのは音色で、これもラミレスの艶やかな響きとの比較で言えば、やや乾いた木質の音像で、そのさらっとした触感が柔和で落ち着いたニュアンスを全体に生み出しており、杉材とマダガスカルローズ材との相乗効果からかどこか翳を帯びたような奥ゆかしささえ感じさせる響きは魅力的。
表面板力木配置は、サウンドホール上側(ネック側)に一本のハーモニックバーと厚さ1mm未満の補強プレートがバーとネック脚の間のエリアのほとんどを覆うように1枚貼られており、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバーが設置されています。この2本のバーの間はサウンドホール高音側と低音側にそれぞれ1本ずつの短い力木が近接する横板のカーブに沿うようにして設置され、ホール周りには同心円状の補強プレートが貼られています。ボディ下部はホール下側のハーモニックバーの中央を起点として高音低音の両横板に向かって斜めに下がってゆくようにして設置された各一本のバー、この2本のバーの下側からボトム部にかけては計5本(正確には6本)の左右対称の力木が平行に表面板木目に沿って設置されており、駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い補強プレートが貼られています。5本の力木のうち中央の3本がこの補強プレートの上を通過していますが低音側の一本はプレートの両側でセパレートされています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。
上記の力木構造は同じマドリッドの、かつて共同作業をしていたこともあるマリアーノ・テサーノス、またパウリーノ・ベルナベのメインモデルの構造と特徴をほぼ一にしており、特にサウンドホール下側ハーモニックバーの中央から左右に1本ずつ斜めのバーが配置され、力木は3~5本が扇状形ではなく互いに平行に配されるところはこれらのブランドに共通しています。
割れや改造などの大きな修理履歴はありません。全体はセラック塗装仕上げ。表面板の指板両脇やサウンドホール高音側などに弾き傷やスクラッチあとがやや多くあります。 横裏板は衣服の摩擦あとのみのきれいな状態。ネック、フレットなど演奏性に関わる部分は良好です。ネック形状は薄めのDシェイプでコンパクトな握り心地、弦高値は2.3mm/3.6mm(1弦/6弦 12フレット)となっており、サドル余剰は1.0~2.0mmあります。ネックの差し込み角度、ネックシェイプ、弦高設定などトータルに弾きやすい設定となっており、両手ともにストレスを感じさせません。糸巻はイタリアの高級ブランドAlessi 製を装着、こちらも機能的に良好です。