〔楽器情報〕 ゲルハルト・オルディゲス 2008年製作 ハウザー1世モデル‘La Honra’Usedの入荷です。 ボディ内部のネック付け根には<GJO 06-2008 MADE AT THE REQUEST OF JULIAN BREAM>と刻印があり、ジュリアン・ブリームから製作家が直接依頼を受けて製作したものであることが記されています。この稀代の名手にして類まれな楽器の目利き(あるいはプロデュース能力の持ち主と言っても良いかもしれません)からのオファーはやはり作り手としての冥利に尽きる思いだったのでしょう、もともと彼は製作した全てのギター名前を付けていますが、本作にはLa Honra(The Honor「名誉」の意)と名づけ、最大限の敬意を表しています。
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:表板 セラック
:横裏板 セラック
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 2.5mm / 6弦 3.8mm
〔製作家情報〕
ゲルハルト・オルディゲス Gerhard J.Oldiges 1955年ドイツ生まれ。大学卒業後にギターやリュートなど幾つかの工房で修業を重ねたのち、1985年にマイスター制度による国家試験に合格しゲゼレを取得、1986年に創設当初のLakewood Guitars のリペア部門で働くことになります。1988年にベルギーで開催されたホセ・ルイス・ロマニリョス(1932~2022)のギター製作セミナーに参加し、この名工から彼のその後の方向性を決定づけるほどの影響を受けることになります。1989年には再び国家試験に合格しマイスターの称号を得るとともに、自身の工房を設立。
ロマニリョスとは師弟として、そして良き友人としてその後も関係は続き、スペイン、シグエンサで開催された講習会ではトビアス・ブラウンらとともに助手を務めています(この講習会には尾野薫、田邊雅啓、中野潤らが参加している)。また彼の畢生の名著と言える「アントニオ・デ・トーレス その生涯と作品」のドイツ語訳を刊行するなどギター文化を拡げてゆくためのアクションも積極的に行っています。自身もやはりトーレスを起点とするスペインの伝統的なギター、そして特にハウザー1世の製作美学に傾倒し、現在もこれらのマエストロたちのギターを規範とした、外観、音色ともに味わい深い楽器を製作。名手ジュリアン・ブリームが所有するなどプロギタリストからも高い評価を得て、非常に限られた製作本数ながら世界中で愛用者を獲得している、現代ドイツの代表的製作家の一人。
〔楽器情報〕
ゲルハルト・オルディゲス 2008年製作 ハウザー1世モデル‘La Honra’Usedの入荷です。
ボディ内部のネック付け根には<GJO 06-2008 MADE AT THE REQUEST OF JULIAN BREAM>と刻印があり、ジュリアン・ブリームから製作家が直接依頼を受けて製作したものであることが記されています。この稀代の名手にして類まれな楽器の目利き(あるいはプロデュース能力の持ち主と言っても良いかもしれません)からのオファーはやはり作り手としての冥利に尽きる思いだったのでしょう、もともと彼は製作した全てのギター名前を付けていますが、本作にはLa Honra(The Honor「名誉」の意)と名づけ、最大限の敬意を表しています。
基となるのはヘルマン・ハウザー1世作のセゴビアモデルで、表面板の力木設計もほぼそれに準じていますが扇状力木やクロージングバーのサイズは1937年製ハウザーに代表される設定よりも大幅に(2倍以上も)拡大されており、またレゾナンスの位置もF~F#とハウザーとしては低く設定されています。力木のサイズなどについての具体的な指示がブリームからあったかどうかは定かではないもの、レゾナンスを低く設定することはブリーム自身が厳密に指定したに違いなく、彼は自身が所有していた1940年製のハウザー1世ギター(懇意にしていたRose Augustine から購入し、後年再びAugusineに戻すことになる)を自身が求めるハウザー的音響のスタンダードとしており、これはイギリスの製作家ゲイリー・サウスウェルによればF#のレゾナンス設定がされており、深くたっぷりとした低音が出るのだそう(ブリーム自身はチェロのような音を求めていたという)。
ハウザー1世作 セゴビアモデルの表面板力木配置、サウンドホール上側(ブリッジ側)に1枚の横幅いっぱいに渡って貼られた1cm幅×3mm厚ほどの補強プレートと1本のハーモニックバー、下側(ブリッジ側)にも1本のハーモニックバーを設置。ホール左右には1枚ずつの角形の補強板が2本のハーモニックバーの間を繋ぐようにして貼られています。扇状力木は左右対象に7本、ボトム付近でこれらの下端を受け止めるようにV字型に設置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積をカバーするようにかなり薄い(1mm未満)の補強板が貼られているという設計。前述の扇状力木のサイズは1cm幅に高さ5mmほどの設定になっており、1937年製セゴビアモデルが3.5mm幅の高さ4mmであるのに比較すると幅が2倍以上の数値に設定されています。
自身のラインナップの中ではフラッグシップ的な位置さえ占めるハウザーモデルですが、巨匠のオファーにインスパイアされたのか、本作は彼の同種のモデルの中でも出色の一本となっています。ヘルマン・ハウザーの特徴としてまず挙げることのできる、撥弦の身体性(爪弾きの感覚と言ってもよいでしょう)を保ったまま最高度の洗練された音像を生み出す、この稀有な発音機能が十全に備わっており、音楽だけのために生み出されるような音がまずは素晴らしい。そしてもう一つの特徴である鍵盤的とも言える整った全体の音響バランスが構築されているのですが、全ての音が有機的に繋がるようにして、旋律においては充実した線、点から点への跳躍や落下の力学、音と音との遠近を、自在に形成してゆきます。さらには弦の揺れや震えに対する反応も良く、透徹なまでの音響機能をベースとしながら、しっかりと「歌う」楽器であることも特筆すべき点でしょう。こうしたハウザー的特性に、オルディゲス氏自身の性質によるものか、全体にほのかに柔和さが加味されており、クラシカルな厳格さと優しさが無理なく同居し、どこか親しみやすさを感じさせるところはブランドの個性が表れていると言えます。
割れや改造などの大きな修理履歴はなく全体の良好な状態を維持しています。糸巻はオリジナル出荷時にはSloane製を装着していましたが現在はイタリアの高級ブランドAlessi 製を装着しています。表面板の指板脇やボトム付近などにスクラッチ傷が少々あります。横裏板は衣服等による摩擦あと(特に演奏時に胸が当たる部分など)や塗装の擦れや軽いムラなどが見られますが外観を損ねるレベルでは全くなく、軽微なものに留まっています。ネック裏には細かな爪キズありますがこちらもほとんど見た目にもグリップの感触的にも気にならないレベル。ヘッド裏側はおそらく弦交換時や調弦の際についてしまったと思われる細かなキズが多くあります。ネック、フレットなどの演奏性に関わる部分は良好です。ネック形状はほとんどCに近いほどにラウンド加工された薄いDシェイプでコンパクトなグリップ感。弦高値は2.5/3.8mm(1弦/6弦 12フレット、サドル余剰2.5~3.5mm)。ネックとヘッドはVジョイント方式。
本器は完成後にジュリアン・ブリームが所有し、後に本人からイギリスのギターショップKent Guitars(現在は閉店)を通じて売却されたもの。